10 アニキは1年坊主がベンチに戻ったのを確認すると、体育館を出て行ってしまった。 後を追うか迷ったが龍二のケガの具合が気になったオレは、そのまま試合を見る事にした。 顧問とマネージャーは首を横に振って制止するが、龍二は自分で適当に包帯で湿布巻いてコートに戻って行く。 再び、審判がピッとホイッスルを吹いた。 「テクニカル・ファウル!」 会場がどよめく。 ケガをしても全く無表情だった龍二が初めて見せた、険しい顔。 だからウチのチームに課せられたファウルなんだという事だけは分かった。 「なー、一体なんなん?」 オレは体育館の中に入り、1番近くにいたタメの女バレに声をかけた。 「ベンチプレイヤーのファウルだよ、さっきの1年生。フリースロー2本。」 アニキが言っていた「取られるから戻せ」とは、「ファウルを取られるからベンチに戻せ」という意味だったらしい。 「つーか別に、アイツなんもしてねェじゃん。」 ちょっと席を立ってキャプテンとしゃべっただけで? 「ゲームの最中に勝手にベンチエリアを離れただけでファウルだよ。」 そんなに厳しいんか。オレはてっきり、大声を張り上げたアニキが咎められたんだと思っていたが違うらしい。 そして相手チームは2本のフリースローを決め、スローインで試合再開。 見ているとどうも龍二の動きが鈍い。やはりケガのせいか。 そこで第3Q終了のホイッスルが鳴り響いた。得点は20‐21。僅差で勝っていた。 インターバル中、ウチのチームは作戦会議もせずにみんな龍二のケガを心配しているようだった。 [前へ][次へ] |