1 『鈴木先生、鈴木先生。お電話が入っています。職員室までお戻り下さい。』 キンコーン カンコーン 「アハハハハ、マジで!?」 「ヤバくね?それって超ヤバくね!?」 「てゆーかバカじゃね?」 この日もオレ達は、放課後の校内放送やチャイムを遠くに聞きながら談笑していた。 「はッ、間違いねェ。」 「タカまでそんな事言うのかよ!」 「1番バカなタカにバカって言われちゃー終わりだな。」 「んだと、テメ。」 オレはいっそう大きく笑って、タバコの煙を吐き出した。 薄暗く湿っぽい校舎裏から上を見ると、窓に写り込んだ青空があった。 それさえ、オレにはとても眩しかった。 「なんか知らんけどいい天気だな。」 誰に話しかけるでもなく小さくつぶやく。 自分の世界に入りかけていたオレはその時、かすかな足音に気付いた。 「しっ!」 くちびるをとがらせて人差し指を立てて、仲間に『タバコ消せ』と合図する。 それから慌ててさらに奥へと転がり込んだ。 我らが宿敵、生活指導の関口かと息を潜める。 だが現れたのは、3人の女子生徒だった。 「誰?」 「知らねーよ。」 オレ達はヒソヒソと言葉を交わす。 そのうち、女子生徒の1人がこう言った。 「センパイ、来てくれるかな…。」 『センパイ』という単語を使うのは、1年か2年だ。しかし彼女達は自分の同級生ではないので、1年生だと判明した。 [次へ] |