違和感なく
本来ならとっくに退院するのだが、私が貧血の検査でひっかかったのもあってまだ入院中。
下の子は、保育器から出たばかりだ。
「そろそろ友達呼ぼうかな。」
まだアッケの家族と、私のお母さんにしか来てもらってなかった。
「んだな。
俺の方は落ち着いてからでいいや。うるせェ奴ばっかだし。」
「アーヤサンは?」
「知らね。メールはしたけど、返事ないし。」
アッケは、ここのところ昼間の仕事は取ってない。
仕事じゃなきゃ、繋がりないのかな…。
夕方、龍二サンが来てくれた。
私は数々の非礼を謝った。
「あのまま一生、奴隷にされるかと思ったよ。」
と、彼は笑った。
「俺なんか、もっとひでェ扱いだったぞ!『役立たず』だの『いらねェ』だの。」
ゴメンてば…。
「抱かせてもらっていい?」
龍二サンはベビーベッドに視線をうつし、言った。
「うん。好きな方どうぞ〜。」
彼は起きていた、娘をそっと抱く。
「壊れそうだね…。」
彼は慈しむ様な顔でそう言った。
今まで見せた事ない、『父親』の顔。
その時アッケの携帯が鳴り、彼は出て行った。
私とふたりになった龍二サンは、「大変だったね、お疲れ様。」と言ってくれた。
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