身代わり
ぴくりと、まぶたが動いた。
私は驚いて手を離し、医師の顔を見た。
「夢を、見ているのでしょうね。」
マスクをしている為にくぐもった声で、そう教えてくれた。
夢…。
どんな夢だろう…。
医師はモニターを確認し、「やはり今は眠っているみたいです。」と言った。
もう1度、アッケの指に触れた。
手の甲の皮が、ズルズルに擦りむけていた。
固まった血の中、鈍く光る結婚指輪がある。
それを見て、私は涙を零す。
医師に頼んで、外してもらった。
私はそれを両手で包み、持ち出した。
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