私には貴方だけ
「なんで?妊娠でもしたのかー?」
金泉先生は頬の血を拭いながら言った。
私の腕時計が当たったのかもしれない。
「まさか。」
私はまだ、息が荒かった。
「一体どうしてだ?退学するには、理由が必要だぞ。」
「私たちには、時間がない。
それに…。
ここは、思い出が多過ぎる。」
「…旦那さんの事?」
「私には、他に大事なものはありません。」
「時間がない、って…まさか。」
「今も、ICUで生死の境をさ迷ってます。
交通事故です。」
金泉先生は、明らかに動揺している。
「…だから、辞めたいのか…?」
私は頷いた。
「…籍は、そのまま置いといてもいいだろう。
旦那さんが持ち直したら、また通えばいい。」
「…え?」
持ち直す…?
アッケが、また元気になる?
あんなに傷だらけなのに…。
龍二サンにも「受け入れる覚悟を」って、言われたのに…!
「あり得ない。」
私は、全てを否定した。
「でも、高砂…」「なんにも知らないクセに、期待させる様な事言わないで!!」
私は、相談室を飛び出した。
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