汚染されたモノ
「うん。知ってる。
いつも、龍二サンの気持ちがドコにあるか不思議だった。」
「そう?見つかった?」
「うん。」
彼は驚いた表情で、どこ?と、聞く。
「『彼女』の元。」
彼は悲しそうな嬉しそうな、そんな顔をする。
龍二サンが沈黙を破る。
「そろそろ、行こうか。」
「…うん。」
私たちは席を立った。
新宿の夏は淀んでいた。
空気が汚いのを、肌で感じる。
「どうしたの?」
会計を済ませた龍二サンが、何を見ている訳でもない私に声をかける。
「やっぱり、人が多い場所は汚れるね。」
アッケはこの街が好きだと言ったが、私は好きじゃないかも。
「それだけ、汚いモノが人間から出てるって事でしょ。」
そう言って、龍二サンは車のエンジンをかけた。
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