お互い、経験者
ふと
「今更だけどさ、」
友梨恵サンが
「赤ちゃん、残念だったね。」
と言った。
「あ…、ハイ。」
「アタシもさ、美紅の後にひとり、流れちゃってんだ。」
「…うん。ちょっとだけ、聞きました。」
彼女は笑いながらおしゃべりめ、と、アッケの悪態をついた。
「でもさぁ。『時期』って、理解してんのかもね。赤ちゃん自身。」
「時期?」
「うん。
アタシ正直、あん時産んでもやってく自信なかった。」
「そうだったんですか?」
年がバレちゃうけどさー、とまた笑いながら
「16になってすぐ美紅産んで、その2ヶ月後には分かったの。」
「…え、あ、16って私と一緒だったの!?」
「あはは。いや〜、微妙に違うかな〜。
アタシ、中3だったからね。」
「…中3〜ッ!!?」
「そう、もうお義父さんにボコボコにされたさ。
シノブもアタシも。」
妊婦に暴力…。
あの、物静かなお父さんが…?
「『お前ら、命をなんだと思ってんだ』ってね。
正しいと思うよ、今になっては。
そん時は悔しくてねぇ〜。意地でも産んでやる、って、それだけだった。」
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