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「キオ〜?」
とてとて、若葉が近付いて来るのが分かる。
「清(キヨラカ)、どうしたの?」
若葉はめったにあたしを『キヨラカ』とは、呼ばない。
あんまり滑舌の良くない彼女はいつも『キオ』。
それは怒ってくれてる時とか、心配してくれる時とか、
とにかく、”本気”の時だけなのだ。
「…大丈夫!」
めいっぱい笑顔を作って見せる。
「大丈夫じゃねーだろ。」
が、無駄。突っ込みを入れたのは最上くんだった。
「保健室、連れてってやってよ。」
「大丈夫。平気だから。それより若葉、今日はここで食べよ?」
「あ、うん。それは構わないけど…。」
自分のでないクラスで誰かの席に勝手に座るのが、気が引けたらしい。
あたしが何か言うより先に、最上くんが若葉に席を譲ってくれた。
「彼はいつもどっかで食べてるのかな?」
「え、分かんない…。」
あたしは普段若葉と中庭に出ているから最上くんがお昼どうしているか、知らなかった。
「後でお礼言っといてね〜。」
こういう時、若葉はすごくちゃんとしたコだと思う。
教室から出たくない、
自分の事でいっぱいいっぱいなあたしは、とても情けなくなる。
それでも、今は何を差し置いても、
教室から出たくない。
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