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「…ッ!?」
あたしは授業中、ガタっとイスを揺らした。
「うん?どうした?」
その音に、黒板にチョークを滑らせていた先生が振り返る。
「…あ、いえ…。な、何でも、ないです…。」
消え入りそう声だが一生懸命そう答え、転がったシャーペンを探す。
床を見ていたあたしの頭にツン、と、何かが触れた。
それは、最上くんが上体を伸ばしてあたしのシャーペンで頭を小突いた感触。
「…。」
俯いたままお礼も言わずにあたしは受け取り、机に顔を伏せる。
なに、今の…。
見間違い…?
見間違い、だよね…。
そうだよ、あんなの…。
きっと…幻覚だ。
無理矢理打ち消そうと、嫌な汗でベタベタな手をきつく握り締める。
そうしたらみしり、と、手の中のシャーペンが悲鳴をあげた。
「大丈夫か?」
昼休み。
あの後から授業はうわの空で、昼休みに入ったのにもたった今気付いた感じ。
「え…?」
顔を上げると、最上くん。
「顔色悪いけど。」
大丈夫、と、答えようとした時。
「キオ〜。行こ〜。」
元気な若葉の声が聞こえて来た。
でも、あたしは振り向けない。
恐い。
だって若葉は、教室のドアの所にいるから──…。
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