5
昼休み。
あたしはお弁当を手にいそいそと、ふたつ隣の5組へ向かう。
「わーかーばー。」
教室の外から手を振ると、やはり若葉もいそいそとこちらへ来た。
「あたし今日購買行くから〜。キオ、先いつものトコ行ってなよ。」
「いいよ。一緒に行く。」
「そぉ?」
連れ立って購買に行く事に。
ウワサに違わず、昼休みの購買は戦場さながら。
「うわっ、厳しい!!」
ちっちゃい若葉は既にうんざりしており、平均的なあたしが頑張るしかないか…。
「若葉、パン何でもいいの!?」
「野菜系はイヤ〜!」
「だから若葉はちっちゃいんだよッ!」
えへっ、て、可愛く笑ってる場合じゃないし。
と、内心悪態ついてたら、
「コレ。いる?」
後ろから肩を叩かれた。
びっくりして振り向くと、口には戦利品のクリームパンを立ったままくわえてる…マリンちゃん。
「え、いいの?」
パンをくれた事より歩き食べな彼女に驚きつつ、あたしの手にカレーパンと焼そばパンが乗せられた。
「ん。取り過ぎた。」
確かに他にもたくさん右手に抱えている。
「320円ね。」
若葉に向かって、空いている左手を出す。
「あ。はい、お金。ありがとう、二階堂さん。」
ほっこりした優しい笑顔の小さい若葉。
すらりと長身で活発的なマリンちゃん。
両極端なふたりを、ぼんやり眺めていた。
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