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「えッ?だ、誰に!?」
この質問は、無視された。
しかしその不愉快さを補っても尚余る喜びを、彼はくれた。
「夏音と普通に出会って、普通に恋愛したかったよ。」
しかしそれは、既に過去系。
鈍いあたしでも分かる。
彼は『元いた場所』に帰る決心をしたのだ、と。
義理か、責任か、罪悪感か。
きちんと別れを告げに来てくれたのだろう。
あるいは、憎からず想った女だからか──‥。
「夏音‥。」
そっと、しかし力強く抱き締められた。
「ホント、食べちゃいたい。」
そう、哀しげに微笑む。
「あ、あたし‥いいよ、倭さんなら‥。」
目を閉じたあたしは、その唇に初めてのキスを受けた。
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