[携帯モード] [URL送信]
embrace
彼はそぉっと、確かめるようにあたしの背中に手を回す。

「ゴメン‥。」

あたしの髪に顔を埋め、聞き逃してしまいそうな小声で囁く。


「ううん、帰って、来て、くれたから‥。」


まだ涙が止まらない。

嗚咽をもらしながら、なんとかしゃべる。



抱き締めるその腕により一層、力が加わる。

「違うんだ。俺が謝ったのは、黙っていなくなった事じゃないよ。」

あたしは顔を上げ、信じられないものを見た。

「ヤダ‥っ、どうしたの!!」

彼の綺麗な顔は、酷いアザと血に塗れていた。

「別にこんなの、大丈夫。いつもの事。」






とりあえず部屋に入り、詰問した。

黙っていた彼が、静かに口を開く。



「ゴメン。俺、もう『真白』でいられない。」



静かに、別れの言葉を。

[前へ][次へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!