visitor
ピンポーン。
家の呼び鈴が鳴らされ、あたしはビクっとなった。
だって訪問者なんて、来た事ないから。
セールスとか勧誘にしたってもう夜だし‥。
そーっとドアスコープを覗く。
「‥えッ!?」
あたしは叫び声と同時に、ドアを開けた。
「どうしたの〜ッ!?」
「犬ですから。帰巣本能?」
申し訳なさそうな笑顔の彼が、立っていた。
なんだかおかしなやり取りだが、
あたしは「おかえり」と言い
彼は「ただいま」と言った。
「警察、どうだったの?」
彼を部屋に入れ、コーヒーを出す。
「管轄内じゃ捜索願いは出てないって。俺、遠くから来たのかな。」
なんとものんびりした答えだ。
「で‥、どうする‥の?」
緊張気味に、聞くあたし。
彼は両手を差し出した。
「え?」
「縛っていいから。本当に何もしないから。一晩泊めて?」
引っ越し用のロープが、あたしの視界に入った。
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