忘れるしか…ない 龍二サンは寝直す、と言ってパイプベッドに潜り込む。 「んじゃ上、行くか。」 とアッケサンに言われ、ついて行く。 こないだ、私が寝かせてもらった部屋だ。 「そっか、ココってアッケサンの部屋だったんだ。」 「ん、間借りしてんだ。」 「これ、英語読めるの?」 無造作に積まれた英字新聞を指差す。 「ん、まァな。」 スゴいな、頭良いんだ。 「なァ。マジ、どうしたん?唇。」 「…噛み付いた、思っきり。その時、切ったんだと思う。」 「へェ。たいしたモンだで、お前。それで血まみれだったんか。」 「…あのね。私、本当に大丈夫だから。」 「どういう意味で?」 答える言葉を、慎重に選ぶ。 「そんなにヒドい事、されてないから。」 「でも、必死で抵抗しなきゃならなかった様なメにあったんだろ。」 「いいの、別に。こんな事、すぐ忘れる。」 「ゴメンな、俺、気付かんかった。 …まともにお前の顔、見れなくてょ。」 [前へ][次へ] |