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遠回りに


リボ→風前提
風+イーピン+10





殺し屋から普通の少女に戻ってからも、彼女は何かと手紙を送ってくれた。その手紙はいつも拝啓、お師匠様で始まり、彼女が今もまだ風を師匠として慕っていることを表していた。
彼女にとって彼はもう殺し屋の師匠ではないのかもしれないが、他たくさんのことを彼女に教えたのも彼である。彼女にとって彼は、永遠に『お師匠様』なのだ。

さて、そんな彼女ことイーピンの師匠である風は、最近その手紙と共に送られてくるものに首を捻っていた。



(造花の髪飾りに、食器に、あと…何だっけ)

木で作られた机の上に思い浮かんだ物をのせながら、風は小さく息をついた。
これらのものはすべてイーピンの手紙と共に送られてきたものである。イーピンは日本で中華料理店のバイトをしているらしいが、造花の髪飾りはともかく食器を買うお金は持っていないはずだ。
この食器、よく見てみると、そこらに売っているものより値段が数倍はするメーカーの製品だった。
それよりも何も、イーピンに送られてくるもののことを尋ねても、何も返事が返ってこないのである。
それが一番不思議だ。
確かにイーピンは多感なお年頃に入る年だが、これはその多感なお年頃の少女の気持ちに引っ掛かるものではないはずだ。

…多分。


いかんせん少女の気持ちをまったく把握しているわけではないので断言はできないが、風は送られてきたものをすべて机の上へ出して、よし、と力強く頷いた。
その時丁度、扉がノックされる。

「はい」

返事をしながら扉を開けると、少女が満面の笑みで立っていた。

「お師匠様!お久しぶりです!」
「やあ、イーピン。大きくなったね。…来て早々、悪いんだけど」

イーピンは珍しく歯切れの悪い風の言葉にきょとんと首を傾げた。

「どうかしましたか、お師匠様」

「これ、何なのか説明してくれるかな」

風の指した方向には、イーピンの手紙と共に送られてきたものが置かれていた。
それを見て、イーピンが明らかに固まる。

「これは、えっとあの、」

今度はイーピンが歯切れ悪くなる番だった。
そんなイーピンに、風はあくまで優しく笑い掛ける。

「イーピン、怒らないから言ってごらん」

その笑みにイーピンの良心の呵責というかそういうものが悲鳴を上げたのか、彼女はがばっと頭を下げた。

「今までお手紙に書けなくってごめんなさい!手紙に誰からの贈り物だとか書くなって、止められてて…」

なんとなく想像がつきつつ、そうでなければいいという願いを込めて、風はイーピンに尋ねた。

「それで、これ、誰からなんだい」









「リボーンです」









こういうときに限って神は人を見放すよなあと信じていない神を恨んで、風は力なく笑うばかりだった。










くっついてない10年後。
















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