-273.15℃ ヴェルデ→リボ風 何だったか、と思う。あいつが好んで吸っていた煙草の銘柄は。その煙草独特の香りが鼻腔をかすめた。 部屋を覗くと案の定、バルコニーの手すりにもたれて煙草を吹かしている。どうやら下にいる誰かと会話をしているらしい。 帽子の下から見える表情を眺めていると、嫌でもその相手が誰だか判った。 俺が部屋に入ってきたことには気が付いているだろうに、まるで知らないような振りをしている。だがなんとなく殺気を感じて、やれやれと手近にあった椅子に腰を降ろした。これ以上は近付かないという意味をこめて。 話が一段落ついたのだろう、階下の相手に小さく手を挙げて、リボーンはこちらを振り返った。 眉間にしっかり皺を作って。 「何の用だ」 「別に。偶然」 軽く手を振ってやると、どうでもよさげにふーんと息を吐かれた。 沈黙が降りる。俺は元々無駄な会話をしない性質だし、リボーンは俺とあまり喋りたがらないから、よくあることだ。目の前のこいつが俺を嫌っていることくらい俺が一番よく判っている。 「おいリボーン」 部屋を出ていこうとしていたリボーンを呼び止めると、不機嫌そうに睨まれた。 「何だ」 「俺はお前の煙草の匂い、好きだぜ」 リボーンの目が大きくなった。しかしそれは一瞬で、すぐにふんと鼻で笑う。 「俺はお前なんか嫌いだけどな」 判りきっていることを言うそいつに俺も笑った。 (絶対零度) title→ライムのソルベ |