Coward リボ→風 視線を感じて顔を上げると、ばっちり目が合った。 相手が視線に気が付いたからといって目を逸らさないところを、彼らしいと思う。同時に中々憎たらしい部分でもあるのだが、私は彼のそういう態度が結構好きなので特に何とも思わない。 どうしたんだい、と訊ねると、べつに、という素っ気ない答えが返ってきた。それでも目は私に向けられている。 「私の顔に何か付いているかい?」 「いや、何も付いてねーぞ」 「じゃあどこを見てるんだい?」 少し意地の悪い質問をしても、彼はただ口角を上げるだけだった。 そんな日常が何度繰り返されただろう。そして何度繰り返すのだろう。 気付いているのに言わない私と、私が言うまで何もないふりをしている君は、どちらが卑怯者なのだろうか。 (結局どちらも卑怯者なのだと言う人間はいない。) Coward…卑怯者 |