結局君に恋してる リボ風 何か困ったことがあったかと言えばそうでもない。稽古中に怪我だってしていないし、風邪なんかひかないくらい健康状態は快調だ。 ただなぜかひとりでに手は電話の受話器を握っていて、指は勝手に彼の電話番号を押していた。 『…何だ』 何度かのコールの後、不機嫌そうな声が聞こえてきた。少し声がかすれている。寝起きらしい。 そういえば時差があることを忘れていた。今、イタリアは早朝だ。 うっかりしていたなと一人で後悔していると、電話の向こうでリボーンは『おい、』と幾分か普通の状態に戻ってきた声で風を呼んだ。 『どうした?何か用なんだろ』 「あー…」 電話をした理由を考えていなかった。不覚である。 『…何の用も無いのか』 明らかに睡眠を妨害されて不機嫌な声を出されて、風はむっとする。 「あるよ、理由」 『ふうん、何だよ』 言ってみろ、というような雰囲気を電話口から出しているリボーンへ向けて、風は息を深く吸い込んだ。 「君の声を聞くために」 『………は?』 拍子抜けした声が漏れてきた。その反応に満足して、風はまくしたてる。 「元気そうだね、それだけで充分だよ。じゃあ、切るから。睡眠を妨害してごめんね」 『ちょ、待てお前…』 いかにも力が抜けたような声を出すリボーンを不審に思って、風は首を傾げた。 「何?」 『…たまに突拍子もないことするよな』 その言葉の意味を考えて、考えて、風の顔が赤くなった。 「……切るね」 『馬鹿、収拾つけてから切れ』 「何の」 『俺の』 う、と言葉に詰まると、ほら、と促される。 観念して口を開いた。 「たまには顔出しに来るんだよ」 こういう時でさえなんとなく諭すような口調にリボーンは笑って、承諾の返事をした。 |