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Novel
痴漢2【モブ*12】
7年ぶりに梓が痴漢に遭います(前作の【痴漢】が2012年の作品でした)
短いです















ガタン……ガタン…
一定の感覚で身体を揺らす電車の振動。交通手段が大方バスである梓にしてみれば、この振動はたまに感じる楽しさの一つだ。学園からバスで駅まで揺られ、久々の外出に胸を躍らせる。

「ふぅ…」

しかし、田舎の駅から都内まではかなりの時間を要する。加えて、特急の切符を買うのは高校生では憚られ、鈍行列車でのんびり旅である。
5駅…6駅……7、8……。しばらくの時間が経ち駅を通過した。梓は自然と目を閉じ、揺られる心地よさに睡魔を手繰り寄せていた。
まだまだ時間はあるし、少し眠ろう……。
そう思い、意識を手放した。






ビクンッ!!

何駅過ぎただろうか、梓は自分の左の二の腕に感じた違和感に身体を跳ね上がらせた。

「(なに……)」

寝ぼけた頭にもバシンと走った違和感に、頭をもたれさせていた椅子の角から顔を上げる。人とは不思議なもので自分の降りる駅になると目を覚ますものだが、それとは違う、外部からの直接的な感覚だった。
左の二の腕。そこに明らかな違和感がある。梓が訝しげにそちらを見ると、反応があった事に怯んだのかわからないが男の指が遠ざかっていくのがみえた。

「……」

眠気も即座に立ち去る不快感に、梓は頭を回転させる。痴漢か、と。以前も自分を女性と勘違いし触ってきた男がいたが、慣れたつもりは毛頭ない。梓がぎろりと睨みつけると萎縮したのか、次の停車駅で男は下車していった。
情けない奴、と心の中で見下す。

もっと触ってきたら堂々と突き出せたのに。

そう思ってハッと気が付く。触られたいわけじゃないのにこう思ってはダメだよなと。
襟足をくるりと弄り、電光掲示板に流れてくる駅名を眺めた。そろそろだなと網棚から荷物を下ろす梓。

それを眺めていたある男の、羨望の眼差しに気づかないまま……。











END


2019.7.02


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あきゅろす。
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