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Novel
★【男夢主】男主*03【姫はじめ】
「なぁ名無し……」

「ん〜?」

「距離が近い」

「いいだろ久々の哉太なんだから!」

「だからって四六時中引っ付いてくんじゃねえよ!!」

だってお前が全然帰ってこねぇから、と名無しは更に身体を密着させる。
正月に合わせ、なんとかスケジュールを調整し日本へと帰国してきた哉太であったが、まさかトイレに行くだけでも名無しを説得する羽目になるとは思ってもいなかった。何ヶ月も家を空けていた事を申し訳なく思う気持ちもあるが、正直うざったい。最初は照れ隠しに引き剥がそうとしていた哉太だが、今では本気で引き剥がしにかかっている。

「お前ホント変わらないよな、こういうウゼーところ」

「哉太が家を空けるようになってからパワーアップした」

「うぜぇぇ」

お正月特番を見ながらお菓子をつまんだり酒を飲んだり。名無しが哉太から離れるのは、酒を取りに冷蔵庫に向かうかトイレに行くか程度であった。
そんな状態が数時間続いた頃、テレビにも飽きたのか名無しは哉太に寄りかかった状態でスマホをいじり始める。

「ん?お前また新しいゲーム始めたのか?」

お笑い番組がCMに入った事でテレビから名無しのスマホへと目線を向けた哉太は、酒の缶を揺らし酒の量を確認しながら声をかけた。ちゃぷっと軽い音がしたため、空っぽにしてしまおうと、一気に煽る。

「犬飼がLIMEで教えてくれてさ。もう半年はやってるかな〜……モンサラ結構おもしれーよ。俺らが高校生の時から続いてんだってさ。課金もした」

「冬のボーナスをゲームで溶かすタイプの人間か」

「いやいや、そんなにはやってない」

「で、どんなゲームなんだ?」

「主人公が異世界に飛ばされ……ぐあ!?」

おもむろに哉太が起き上がった為、背もたれを失った名無しはそのままごろんと倒れこむ。幸い倒れた先にお菓子やら酒の空き缶は転がっていなかったのでダメージは少なかったが、声くらいかけろよ!とがばっと起き上がりキッチンにいる哉太に叫んだ。

「お前が体重かけすぎなのがよくわかっただろ?」

「俺様がゲームの説明をしようという時にお前……ぐぎぎ」

「名無し、次またビールいくか〜?」

「んや、“丸絞りりんご”がいい」

「はいよ」

少し残っていたビールを飲み干し、戻ってきた哉太からチューハイを受け取る。哉太は名無しの横に腰掛けると、今度はちゃんと聞いてやるよと言いながらプルタブを開けた。

「主人公が異世界に飛ばされるんだけど、ただの人間なんだよ。そいつが異世界から脱出するためにあれやこれやする感じ」

「あー!それ聞いたことあるな。宮地が顔真っ赤にしながらやってんの見たわ昔」

「それだそれだ。笑えるよな。むっつりにはたまらないゲームだからなコレ」

ケタケタと笑いながら、名無しは画面をタップし戦闘を進めていく。初詣どこ行く?近所の神社でいいか〜とのんびりと話しながら、二人の正月は平和に過ぎていった。
……はずだった。

「あ」

「ん?」

「そうだ、姫はじめをしよう」

パタンと音を立ててスマホケースを閉じた名無しは、とてもいい案を閃いたような顔をして哉太の顔を見つめた。

「と、唐突に何言い出すんだよ!!」

「俺たちが最後にセックスしたの何ヶ月前だ?覚えてないだろ!?そんでお前来週からアメリカだろ?またできないじゃん!!やろう!新年だし、ヤろう!!」

「ヤりたいだけじゃねえか!!酔ってるだろお前!!」

「痛い!!」

手に酒の缶があったため、哉太は殴るのではなく頭突きを名無しにかました。











「わかった。わかったよ。ヤるのは諦めるよ」

数分の論争の末、諦めた名無しはスマホを片手によっこらせと立ち上がった。哉太はそれを見上げると、冷たい缶を傾けごくごくと酒を飲んでいく。まだ素直になれるには酒の量が少ないようで、哉太は名無しに気付かれないよう飲むペースを早めた。哉太とて、決してセックスしたくないわけではないが何分素直になれないのだ。
それに……何ヶ月もシてねえのに入ったら浮気とか疑うよなこの馬鹿……。
海外を飛び回っている間、寂しくなかったわけではない。時には名無しを思って一人で慰める事もあった。

「わかったよー……一人でしますー……」

「……そうしてくれ」

どうせスマホでえっちな動画でも見るつもりだろう。名無しはスマホの電池残量を気にしながら自室へと向かった。静かに閉じられた廊下へ続く扉を見つめ、哉太は「はぁ〜」とため息をつく。引っ付かれるのはうざったかったが、いざあっさりと離れられると寂しさを感じるもので、自分の我が儘さに呆れてしまう。
すげー久々だし、もし、ヤったとしたら……アイツ…どんな風に俺を……。
口の中に広がるアルコールの味が、急に味気なく感じる。味気ないのに、身体は勝手に火照り、哉太はまたため息をつくと自分もスマホと酒を手に持ち自室へと向かったのであった。










「っく、……」

本当は哉太で新年一発目の射精を迎えたかった名無しであったが、喧嘩までして無理矢理にシたいわけではない。写真家として働き疲れているであろう彼を想い、無理強いは避けた。不毛さを感じながらも自身を扱き、頭の中で哉太の乱れる姿を想像しながらスマホで成人向けの動画を眺める。脳と視覚の相乗効果で短時間に己を高めた名無しは、手近に用意していたティッシュの箱に手を伸ばす。腰にじんわりとした感覚が集まり、頭は白くなっていく。そろそろだなと思いラストスパートをかけた名無しは、そのまま手の速度を速め……

コンコンッ

「……?」

もう少し、あと少しで絶頂に達しようというところで背後の扉からノックの音が響いた。訝しげに振り返ると、再度コンコンと扉が叩かれる。名無しが不満げに「なんだよ」と扉に向かって声をかけると、扉の向こうから聞き取れないくらい小さな声が聞こえた。

「は?」

「……入っても…いいか…?」

「……?どーぞ」

あと少しだった己をパンツの中に納め、首だけで扉の方を向くと、そこには顔を赤らめた哉太が少し前屈み気味に立っていた。

「お、おい具合でも悪いのか!?」

名無しはティッシュで手を拭きながら椅子から立ち上がり入口へと向かい、俯き加減な哉太の顔を覗き込む。見ると、哉太は赤い頬をして目を潤ませ、それでも名無しを睨みつけるように見つめていた。

「……早く酔いたくて…、一気に飲んだ…」

「なにしてんだよ」

「お、俺だって……お前としたくないわけじゃない…し…」

「はぁ?」

さっき喧嘩になりかけたその言葉を哉太が言った事で、名無しの鈍った頭は少々混乱する。酔った頭で哉太の言葉を理解しようとする名無しだったが、ふらっと自分に抱きついてきた哉太に驚き、その細い身体を抱きしめた。自分に倒れこんできた哉太の股間が腹に当たり、哉太が勃起している事を身体で感じる。

「おまっ……」

「俺だって……俺も……」

「おいおいお前どんだけ飲んだんだよ!!取り敢えずベッドいくぞ!!」

名無しも相当飲んでいたが、飲んでいた自分ですらツンと香るアルコールの匂いを感じた。名無しは自分より背の高い哉太を抱えるように抱き、自分のベッドへと引きずっていく。ドサリと身体をベッドに落とした哉太は、潤んだ瞳で名無しを見上げた。

「お、俺も……抜こうとしたんだよ…」

「…っ、じゃあ、なんで俺の部屋に来た……?」

我慢の限界とでも言いたげに、名無しは哉太に顔を近づける。恥ずかしそうに顔を背けた哉太だったが、再び名無しの方へと顔を向けると、目を細め小さな声で囁いた。

「姫はじめ……したいんだろ…?折角なら、一緒に、と思って…」

「あー……お前マジ…」

「んっ、ん‥‥」

かなり酔っているのだろう哉太に、耐え切れないとばかりに唇を重ね、舌を半開きの口にねじ込む。名無しは手をシャツの中に滑り込ませると、思うままに肌を手の平で味わった。舌が絡み合い、いやらしい音が室内に響く。

「俺……俺、準備したから…早、く……」

「いや、だって、ヤんのすげー久々じゃん。そんなちょっと慣らしたくらいじゃはいらねーって!」

「だ、だから……」

想定していた通りの返事をする名無しに、哉太は羞恥心が蘇る。

「俺……いつも…」

「いつも、何?」

「……いつも、後ろもいじってたから……平気…だから…早く……」

「〜〜〜〜…お前な‥…!!」

そういうの、反則だろ。
哉太の頬を両手で包み、もう一度口付ける。愛おしさがあふれて止まらず、名無しは歯の一本一本まで舐め尽くすように口の中を舌で犯した。唇から頬、そして耳へとじっくりと肌を味わいながら舌を這わせた名無しは、耳の中へと焦らすように舌を挿入する。

「んんぅ……」

「なぁ、哉太……俺の上に乗ってくれよ…」

「ぁっ、う、上……?」

ベッドに哉太の身体を押し付けるようにしながら、名無しは逆の事を哉太に要求した。哉太はよろよろと身体を起こすと、寝転んだ名無しの腹に手の平を乗せてゆっくりと腰の上に座る。

「そう、そのまま腰上げてさ……俺の、お前んナカにいれてよ」

「はぁ!?……んな、恥ずかしい事…できっかよ……」

「俺が見たい。いいから、やれよ」

「……ッ」

命令的な口調。普段なら拳が飛んでいるかもしれない口調だったが、今の哉太にとっては起爆剤のようなもので、キュン、と股間が疼き熱が集まるのを感じた。

「ぁ、は…っ、ん……このまま……いれちまうのか……?」

「あぁ……早く、挿れろ」

名無しは全く腰を動かそうとはしない。全てを哉太に任せている。哉太は、言葉だけで挿入を待たずにイってしまいそうな自分を律して、歯を食いしばり自分の孔へと名無しのモノを宛てがった。体重をかけ、少しずつ飲み込んでいく。

「あっ、ぁ、あ…ぁぁ……やばい…」

「っくぅ……やっぱ哉太のナカ……気持ちいい…」

「んくっ……俺より…チビのくせに…なんでこんな……」

「身長とは関係ねーっつ、の!!おら!!」

「ひぅ!?」

名無しが一気に腰を突き上げると、哉太は大きく仰け反り喘ぎ声をあげる。舌を噛まないよう咄嗟に口に運んだ指を力いっぱい噛み、突き上げられながら、いつの間にかその指をいやらしくしゃぶっていた。まるで名無しの陰茎をしゃぶる時のような恍惚とした表情に、名無しは興奮を高め一層強く腰を押し付ける。

「んふっ、ん、んっんんっ!!や、ぁあ!!」

「やべーな……哉太エロすぎ……ヨダレで手ぬれぬれじゃん…その手で自分のちんこしごいてみろよ…」

「っ、あ!!やばい……、ぐちゅぐちゅいってやばい……ああ!」

名無しに言われるまま、己の陰茎を扱く。哉太は突き上げられる衝動と自分を追い込む快感に追い詰められ、切羽詰まった喘ぎ声で自分の限界を伝えるしかなかった。

「駄目、だ…もう……イッ、イくから……奥、奥やば…ひぃ、あああああ!!」

「奥突かれるの好きだな、お前…!!ほら、さっさとイけよ……ッ」

自分の身体を支えるだけで精一杯で、哉太はされるがままに身体を揺さぶられる。名無しが腰を突き上げる度にバランスを崩しそうになり、最後は名無しに抱きつくようにしていた。

「無理、も、無理だ…名無し……名無し…!好き…だ、あ、んんんん!!!」












「あっ、やった!!哉太!起きろって哉太!!」

「ん〜〜……?」

哉太が目をあけると、朝日が網膜に飛び込んできた。その眩しさにギュッと瞼を閉じるが、隣で肩を揺さぶってくる恋人のうるささに顔を更にしかめる。飲みすぎたせいか、頭がズキズキと痛む。名無しは二日酔いになっていないのか、哉太の身体を揺さぶる手に力がこもっていた。

「モンサラ、新人限定イベやるってよ!しかも招待した人には限定アバタープレゼントだって……!!哉太!早くモンサラインストールしろ!!一緒にやろうぜ!!」

「うるせえ……」

仕事が始まればこうして一緒のベッドで過ごすことができなくなる。ゆっくりと雑談することもできなくなる。うるせえ、と文句を言いながらも、哉太はこの何気ない日常を嬉しく感じていた。







END


2018.1.5

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あきゅろす。
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