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第二の人生
3
ホグワーツ魔法魔術学校。そこに私は明日、入学することになる。

楽しみだと喜ぶジェームズとそんな息子を見て喜ぶ両親。そして私はというと全く行きたく無い。

学校だぞ…!?勉強するあの学校だぞ!?女の子同士でグループをつくり輪に入れなかった者は地獄を見る、あの、学校!!それも七年!!全寮制!!!一年目でこけたらもうアウトだろ!!立て直す場所がない!!!!こええええ!ホグワーツこえええええ!!

「名前は楽しみじゃないの?」

母さんに振られて私は首を横に振る。

「友達出来る気がしない…勉強したくない…何を考えて楽しみという結論に至るのかわからない…」

真新しい教材にときめく時代は既に過ぎ去っている。






特に手紙を送る気も無い私のペットは猫のポルコだ。本名マルコ。でもポルコ。わかるだろ?飛ばねぇ豚はただの豚だぜ、なぁポルコ。と視線を送れば引っかかれた。ごめん君は優秀な猫ですはい。

黒と白の特に品種もない猫だが私はこの他人や他の猫を蔑むようなこの目にやられて気に入った。

彼も私を気に入ってくれたようでよく私の肩の上に乗っている。私が彼に気遣うことはなくても肩から落ちたり爪を立てたりしないのだからもうポケモンごっこしたくなる。いけ、ポルコ!ひっかく攻撃いててててて!ごめんポルコで遊んでごめんー!海賊のポルコとは似ても似つかないけどまぁいいや。ポルコです。はい。

コンパートメントは勿論ジェームズとは別々。私はポルコを膝に乗せ貰ったお小遣いで買ったお菓子を食べていた。

「こんこーんここいーですかー」

のんびりとした口調の女の子が顔を覗かせた。

「…どうぞ」
「お邪魔ーしまーす。おー可愛い猫さんだねぇ、お名前は?」
「え、えーっと…マルコ」

実はうちのマルコ、ポルコって呼べるのは今のところ私だけなのだ。

「そーかそーかマルコかーいーいこだねーいて!」

撫でようとした彼女をひっかくマルコ。

「ご、ごめん…マルコ人見知りだから…」

「いーのいーの猫なんてそんなもんよー。あたしーアンナねー。」
「私は名前。」
「そかそか名前ね!マルコに名前!覚えた!新入生?」
「うん。」
「あはーあたしもー!仲良くしてねー」
「うん。」

なんか…読めないぞこの子…

「なんかさー家族が寮の決め方は巨大なトロールと対決して決めるって言うんだよー」
「そうなの?なら次にくるヤギの方が大きくて美味しいですよって言えば大丈夫だよ。」
「えー!?そうなのー!?名前すごー!博識ー!」

さんびきのやぎのがらがらどんより。

「でも私的には違うと思うんだよねー。名前はなにするんだとおもう?」
「岩に刺さった聖なる剣を抜けるか抜けないかで入学できるかできないかが決まるんだと思う」
「えー!入学決まってないの!?帰されんのそれ!だったらもう帰るわー」

聖剣エクスカリバー!的な。
なんかアンナってノリが他の子と違うなぁ…

「あーどの寮がいいかなー」

アンナは窓に寄りかかって言った。勇敢なグリフィンドール、勤勉なレイブンクロー、誠実なハッフルパフ、狡猾なスリザリン。
これだけ言うと私スリザリンだろうな…。

「あたしスリザリンかなぁ」

同じことを考えていたようでアンナがぼやく様に言った。

「同じく。でも別に純血主義でも無いんだよねー。仲良くできるかなー」
「どこの寮でも仲良くしてねー」
「グリフィンドールとスリザリンだったらやだ」
「えーそういう時は嘘でもうんって言うんだよー」

アンナと私はまるで長年の友人の様に特別な会話をすることなくホグワーツまでの車内を過ごした。



「イッチ年生はこっちだ!」

イッチ年生イッチ年生と特徴的な話し方をする大きな男の元に人とぶつかりながら向かうとそこには同じ位の年頃の子供達が大勢集っていた。

「はぁ〜…入学だねぇ」

新品のローブにキラキラと輝く子供達の目。一方私達は。

感心する様なアンナを見るとつい溜息をついてしまった。

「ねぇ、アンナって前世の記憶とかあったりする?」
「え、何それ。あるわけないじゃん。あー、いいねそれ。あったら人生簡単そう。」
「イージーモードだね。」
「おお、いいねー」

…え、私みたいな特別な事情もなくこの中身…。

「…一回アンナの頭解剖してみたい」
「いきなりそんなこと言い出す名前さんを解剖したいよあたしは。」

ボートに乗り込みのんびりと向かう私達の間に新生活への緊張や期待は皆無である。

「アンナさぁ、日本とか行ったことある?」
「今度は日本?あれでしょ?忍者いる国。ないない。怖いじゃん」
「バカじゃんアンナ。忍者はねぇ殺しはしないんだよ。」
「うわかっこいー…っていきなりバカ呼ばわりかよー」
「絶対アンナに日本合うよ。子育てひと段落した頃に連れてってあげる」
「先が長いわ」

今の日本に合うとは言ってない。

ホグワーツ城が見えて来ると日本人の私は流石に興奮する。

「あれ、名前実はお姫様思考?」
「バッカおま、あれは観光しなきゃ損だろ!」
「あそこ学校だよ落ち着けよ名前ー!」
「うおー冒険してー!」
「落ち着けー!」

せっかくイギリスにいるんだから城観光とかしておくべきだったなー石造りの街に慣れて興味も湧かんわとか思ってたけどやっぱり興奮するぜー!

城に入れば厳しそうな初老の女性が立っていた。うおお。こええ。

「組み分けは組み分け帽子が行います。名前の順で呼びますから…」

彼女が淡々と説明をするのに私はキョロキョロ周りを見回してばかりだった。天井高い!階段多い!エスカレーター作れ!

「そういえば名前って苗字なに?」
「ポッター。アンナは?」
「パウンド。多分名前の次だね。」
「おおーよろしく」
「寮が一緒ならねー」
「アンナと一緒じゃないとか組み分けの基準疑うわー」

だらだらと小声で話していると大広間への扉が開いた。四寮の間を進み中央の道を歩く。天井には星が瞬いている。流石魔法界。

できることなら魔法なんだから1人に対し1人の弟子、大鍋をかき混ぜドラゴンと戦うような冒険をしたかった。いや、したくはないけど。せっかくの魔法が家事に使われるなんて。

早速組み分けが始まると古びた三角帽子をアベカシス君が被った。

「スリザリン!」

アベカシス君はスリザリンらしい。嬉しそうにスリザリンの席に小走りで向かった。Pまで先は長い。

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