Best Of…(相互御礼、円鬼+イナズマジャパン) 誰にも負けない価値を ここに示そう 《Best Of…》 ー…それは、突然に発覚した。 「「え…」」 周りにいたメンバーの声が、小さくもいっせいにハモった。 そして、その声に囲まれるように向けられた先にいた人物…そう、鬼道はポカンとしたように止まっていた。 連日に渡るFFIの強豪同志の試合、そしてその合間合間で繰り返される各国それぞれの練習風景。 ここ、ライオコット島では今日も当たり前のように繰り広げられていた。 そこらじゅうでサッカーボールの音が跳ね回っているんじゃないかと思えるくらいに、今この島はサッカー一色だ。 そんな中心にいるこの少年達には今のこの現状が当たり前の光景で。 来る日も来る日もサッカーに明け暮れる、それが当然のように思っていた。 そんな中、ポン…と降ってきたような休暇の話。 それを言い出したのは響木監督だった。 昼食を取るサッカー少年達に、気分転換として観光と銘打った休暇時間を与えてくれたのだ。 そういえば、と思い返すくらい自分達が全くこの島を観光的な意味で見て回っていない事に、今更ながら気が付いた円堂達イナズマジャパンメンバーには、その言葉がごく普通の中学生らしい子供の時間に戻るきっかけになっていたのかもしれない。 突如わいた時間は、サッカー少年達を日本代表の重々しさを背負った姿から、一時の無邪気な少年達へと戻したのだ。 ……そして、冒頭へと戻る。 ライオコット島の中心とも言えるタイタニックスタジアムの近場の土産売り場で。 先程まで真剣に選んでいた土産など、視界に入ってないんじゃないかと思えるくらい、周りの皆の視線はチームのゲームメーカーに集中していた。 事の発端は鬼道の一言だった。 皆が土産を手にあれこれ談笑している後ろで、佐久間と並んでキーホルダーを眺めていた鬼道が発した一言。 『この島では、カードやIDが使えないようで…不便だな』 佐久間との会話の中で、本人にとっては何気ない一言だったのだろう。 だがそれは、普通のいち中学生である他のメンバーからしたら、信じられないような台詞だったのだ。 「……な、何だ?」 「何だ…って、き、鬼道?お前…中学生なのにカード持ってるのか?」 「あ、ああ。それがどうかしたか?風丸?」 引き攣ったように固まる風丸を他所に、不思議そうに首を傾げる鬼道。 「どうかしたかじゃねぇだろ?中学生で普通、んなもん持ってる奴いるかよ?!」 「て…いうか鬼道君、いつも支払いはカードかIDなの…?」 「ああ…そうだが?」 風丸に続き、乗り出したように言い張る染岡と苦笑する吹雪に、ますますわからない…といった表情を見せる。 「なあ?あいでぃーとかカードって何の事だ?綱海?」 「さあな、俺にも全然わかんねぇ」 「え…?円堂さん…?つ、綱海さん?!」 「…さすが円堂に綱海だな。まずそこからわからない時点で」 「ハハハ…。二人と鬼道君の格差がわかりやすいくらいにはっきりとしているよね」 必死に円堂と綱海に説明し始める立向居を横目に、やれやれ…と小さく笑う豪炎寺とヒロト。 「てか、お前ら驚き過ぎじゃないのか?鬼道は鬼道財閥の跡取りだぞ?これくらい当たり前の事じゃないか」 何を今更、と言わんばかりに呆れた表情を見せる佐久間。 元々同じ帝国にいて、参謀として側にいて、ましてや帝国学園自体が金持ちや学歴の高い優等生の多い学校なのだから、佐久間からしたら見慣れた光景なのかもしれない。 だが、他の面子はそういった環境に耐性など全くないメンバーばかりなのだ。 佐久間の言う通り、財閥御曹子なら当たり前の事なのかもしれないが、実際目の当たりにした現実は、なかなかすんなりいち中学生達には理解できるものではなくて。 「鬼道さんってお坊ちゃんだったんですね」 「…その言い方、やめてくれないか、虎丸…」 「え?!…じゃあ鬼道はお金とか持ち歩いたりしないのか?!」 立向居にわかりやすく説明してもらって、何とか飲み込めたのか、再び円堂が声を張り上げる。 「まあ…普段持ち歩かないな」 「じゃあ自販とかコンビニでちょっと買い物したい時もそのカードとか使うのか?」 「いや…そもそも、自販機やコンビニを活用しないからな…」 「…鬼道の行く店って、なんか高級そうな店な気がしてきたな…」 「ひょっとして鬼道君…買い物の時とか値段みないで購入するタイプだったり?」 ハハハ…と引き攣るように苦笑いし始めた土方や吹雪や周りの面々も、次第に自分達との格差に笑うしかなくなってくる。 「ハッ、金持ちっていうのはいいご身分変だねぇ、鬼道君?」 「…不動」 「将来、鬼道君と釣り合う奴は大変だな。鬼道君に見合うだけの地位や名誉がなくちゃならねぇんだからな」 「おい、不動!鬼道に失礼だぞ?!」 ぎゃあぎゃあ怒鳴り始めた佐久間と流す不動とは別に、「え…?」と小さく呟かれた円堂の声が鬼道の耳に届いた。 何かを考え込むような表情をし始めた円堂に、何だ?と不思議に思う。 …だが、その前に。 「も、もうその話はいいだろう?!ほら、そろそろ宿舎に戻る時間だぞ?!」 その前に、段々自分の置かれた状況に堪えられなくなったのか、慌てて遮るように言葉を発した鬼道。 多少の苦笑いを残しつつも、『時間』と言う言葉に皆それぞれ反応して。 「あ、本当だ。もう戻らなきゃな」 「遅くなると久遠監督に怒られるっす!」 バス停へ向かって走り始めたメンバーにホッと胸を撫で下ろし。 さて、自分も…と足を進めようとした時、隣で今だに唸っている人物がいる事に気が付いた。 「…円堂?」 「……」 何か、深々と思案している円堂は…そういえば、先程から変だったな…と思い返す。 「えんど…」 「ーー鬼道っ!」 もう一度呼びかけようと肩を叩こうとした瞬間、逆に勢いよく両肩をがっちりと掴まれてしまう。 「な、何だ?」 ビクリ、と肩を揺らしつつも、やけに真剣な眼差しで捕らえてくる円堂に何とか返事を返して。 「…鬼道…俺っ、」 言いにくいのか、はたまた何か理由があるのか。 円堂にしては歯切れの悪い口調に、鬼道も身体が緊張していくのがわかる。 「俺…さ、頭よくないし、偉くもないから地位とか名誉とかもないし…金持ちでもないし、だから…鬼道には釣り合わないかもしれないけどさ」 「……え?」 「だ、だけど鬼道を想う気持ちは人一倍あると思ってる!鬼道を好きだって気持ちは誰にも負けないから!…っ、その…だから…」 「っ?!」 思わず、口元を押さえた。 な、なんて事を言い出すんだ、コイツは?! 鬼道は、自分の顔がみるみる熱を帯びていくのを感じた。 「…え、んどう。あの…な?俺は別に…地位や名誉なんて…無くなって構わないんだが…?」 「え?だって…」 「お…俺だって、そんなもの無くとも…お前がくれる…す、好きだという気持ちさえあれば…他には何もー…」 「え?」 ほうけたように、キョトンと見つめる純粋な瞳に、いよいよ鬼道は堪えられなくなる。 「鬼道…?い、今…」 「っ!?な、何でもない!」 「ちょ、鬼道ぉ〜!」 逃げようとする鬼道を素早く後ろから飛び付くように抱き込んで。 「へへっ。鬼道、俺…いつでも何回でも、とびっきりの大好きな気持ちを伝え続けるからな!」 「う…っ!」 「誰にも負けない、1番の大好きをお前にあげ続けるからな!これから先も、ずっと!」 だから覚悟しとけよ?と己をガッシリと包み込む、包容した温もり。 人が与えてくれる価値は 決してお金では買えない価値がある。 そう、最初に示した人は誰だったのか。 今、その思いを 鬼道は1番に噛み締めながら。 「…約束…だからな?男に二言はないんだろうな?」 「おう!任せとけ!」 無邪気に自分に最高の『好き』を与えてくれた存在に、安堵と幸せを乗せた笑みを浮かべたのだ。 最高の価値を示してくれたその人に 御礼と情愛を伝えよう 想いが形として ここに残るように。 ************** イナズマジャパンメンバーをなるべく出したかったんですが。やはり全員は出せなかったですね。 金銭感覚云々な話に…なってますか?ね?微妙な感じもしますが…。 実際の鬼道さんの金銭感覚とか財布事情ってどうなんでしょうね? とりあえず。円鬼として最後がラブラブになっていたら幸いなんですが…む、無理矢理な気も(汗) 氷さんへ、相互御礼として円鬼+イナズマジャパンで『金銭感覚ゼロな鬼道くんに苦笑いな円堂』との事でしたが。 こ、氷さん、こんな感じで大丈夫…ですか?! 2010.9.30 [*前へ][次へ#] |