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Riddle(氷様1万打祝い、円鬼+春、ギャグ)
突然訪れる
防ぎようのないその出来事に

世界が歪んだ気がした


《Riddle》


ーー最悪だ。

先にも後にも、この言葉しか出てこなかった。


「き、キャプテン…?お兄ちゃん…?」
「お…となし?!」


耳にやけに反響する二人分の音声が、幻聴であったらどんなに楽だったか。
そんな事が頭を過ぎったのだ。



「…」
「あー…えーっと、音無?これは…だな…」
上から、滞るように詰まった少年の声。
いつも明るくさんさんと輝く覇気の高い声を人一倍あげてる癖に…。
そんな様子が微塵も感じられない弱々しい声も、また俺から見上げた焦りを塗りたくった顔色にもありありと滲み出ている。

……と、そんな円堂の様子をいかにも冷静に分析しているように見えるかもしれないが。
実は円堂以上に頭を取り乱しているのは、多分俺の方だろう。
正直な話、こうして自分以外に意識を向けていないと、ますますボロが出そうなのだ。

そもそも、こんな状況になったのは円堂のせいなのだ。

ライオコット島の日本宿舎に着いてから、早々に部屋割りが決められた。
偶然にも同室になったのが、そういう間柄の円堂で、いや…別にその事自体は俺も嬉しかった。
その事は円堂も同じだったようで、そうして円堂が喜んでくれる事実は素直に嬉しいと思えた。
だけどコイツが、初めはくっつき纏わり付く程度のスキンシップを、その勢いを加速させて押し倒して来たのが悪いんだ。
そうして受け身も取れずに驚いたまま、ベッドの上で組み敷かれた身体を見下ろす円堂の少しいつもより大人びた笑顔が近付いて来た…と、あと僅かな距離で認識した時、軽い呼び声と共に部屋の扉が開かれた。
ー…そしてそれが、俺の最愛の妹の春奈だった…という事実。


それが俺の言う『こんな状況』の経緯だ。



「……円堂」
実に信じられない程弱く掠れた声が、ようやく喉の奥から零れ出た。
俺を組み敷く上から、ゆるゆると視線を向ける濃い褐色とかちあったのを確認して。
「円堂…どうしてくれるんだ…っ!春奈に見られ…っ、駄目だ。お、俺は…実家に帰らせてもらう!」
「き、鬼道?!どっかでよく聞く台詞!?いやいやいや、何言ってんの鬼道?戻って来て、意識、戻って来てくれーっ!」
まだライオコット島来たばかりだから!そう言って俺の身体を揺さぶる円堂。

駄目だ、無理だ。
春奈にこんな所見られたら終わりだ。
というより、無言で固まったままの春奈の姿が今の俺には堪えられない…!

何か泣きそうになるような詰まった感覚に駆られて、このまま消えてしまいたくなる俺と、もう色々混乱してそうな円堂と。
そんな俺達の空気を開いた少女の声が、遅れて耳に届いてきた。

「…キャプテン、これは……どういう事ですか…?」
「え、」
「私…っ、キャプテンは凄い人だって認めてますし、尊敬もしてます!…でもっ!お兄ちゃんがそう簡単に誰かの彼女になるのは認められません!」
「音無…」
「ごめんなさいキャプテン!でも私…大切なお兄ちゃんが急に誰かのものだなんて…そんな…っ」

……春奈、
真剣に会話している所を悪いんだが…。

何故俺と円堂が付き合ってる事にも、それ以前に男同士だという事にも一切ツッコミを入れないんだ?
…というか何よりも。
何故俺が端から女役だと決め付けて話が進んでいるんだ?

お兄ちゃん、色んな意味で心配になるんだが?

「で…キャプテン?お兄ちゃんとはどこまでの仲なんですか?キスはいつしたんですか?」
「え?いや、まだしてないよ!だから今初めてしようと…」
「えええ円堂おぉぉっ!?お前は何を正直に答えているんだーっ!?」
「初めて?!キャプテンそれはどういう事ですか?!可愛いお兄ちゃんを目の前にして、まだ手も出してないのはおかしいです!キャプテンはもっと男らしい人だと思ってたのに!」
「あ、え?うん…ご、ごめん」
俺が上の円堂を突き飛ばす前に、円堂の二の腕にしがみついて詰め寄る春奈。

いやあの、春奈…?
お前は俺と円堂の仲を否定してるのか促進してるのかどちらなのか?
それと円堂、お前も何を素直に謝ってるんだ、馬鹿。
そして俺の上で二人で口論するのは止めてくれ、というか、いい加減どいてくれ。

いや、それ以上に。

「……妹に…可愛い…って言われた…。ショックだ…」
「キャプテン、私…お兄ちゃんには、お兄ちゃんを大切に守ってくれるような男らしい人に嫁がせてあげたいんです!」
「…って?!と、嫁がせ…?は、春奈?だからなんで女役前提…」
「待ってくれ音無!俺は鬼道を大切にしたいから…無理強はしたくないんだ!」
「いやだから円堂も……というより二人共、俺の話も聞いてくれ」
何でこの二人は、始極真面目に話を進めているのだろう。
何かがおかしいと思ってくれ。

「音無、お前の思いはよくわかったよ。だから俺、音無が安心して鬼道を任せられるような男になるからさ…!だからしっかり見ていてくれ!」
「わかりました。でも、私の採点は厳しいですかね、キャプテン?」
まるで試合終了後に熱い友情を分かち合う好戦手であるかのような輝かしい誓いを立て合う二人を上空に見上げ。

只々、もう何でもいいからせめてどいてくれ。

沈むベッドの柔らかさを全身に感じながら、諦めの感情で眺めていたのだった。



**************

円鬼+春という事で、円堂と春奈が一悶着…を意識して書いていたつもりが、あれ、何だか最後友情育んで…?

春奈と円堂がちょっとズレた子になってしまいましたね。
個人的に春奈はブラコンでお兄ちゃんは絶対だれにも渡さない!というタイプか、キャプテンになら渡しても…(もしくはキャプテンとくつっけよう)と思うタイプかどちらかだとおいしいと思ってます。特に後者だといい。春奈はキャプテンの事をかなり尊敬していると思うので。

ともあれ、円鬼+春で「円堂と春奈が一悶着ある話」、氷さんの一万打記念に捧げます!おめでとうございます!


2010.12.20

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あきゅろす。
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