距離(円鬼)
少しずつ
その距離を詰めたと思った
《距離》
鬼道はとても繊細な造りをしていると思う。
出会って間もない頃、そんな印象を受けた。
いや、それは今も変わらずそう思う事はあるけれど。
何ていうか性格とかもそうだけど、何より肌にしても瞳や髪…つまり『鬼道有人』を司る全てのパーツが、俺らみたいな人とは比べものにならないほど一つ一つが繊細にできているんじゃないかと思う。
時々、そんな錯覚を起こす。
出会って間もない頃は特にそのイメージが強くて。
だから初めて鬼道の手に触れた時、内心とても驚いたんだ。
鬼道の手も俺達と何ら変わりなく、とても温かで。
そしてその時気付かされた。
俺は鬼道の事を繊細だと思うあまりに、熱をもたないガラス細工か何かみたいに無機質な印象を受けていたのではないか…と。
知らず知らず、自分達とは違う存在に見ていたのではないかと。
まるで…壊れ物を扱うように接していたのではないかと。
ようは、俺は鬼道の事を何も知らなかった…ということなのだ。
鬼道に初めて触れたあの瞬間、その事を知った。
こうして同じチームで仲間として…ようやく近付けたと思ったのに。
俺と鬼道の間には、見えない隔たりがある。
二人の間にあるその距離が酷く切なく感じたのを今でも覚えている。
だから、少しでもその愛しい存在に近付きたいと思ったんだ。
「ー…で?お前は一体何がしたいんだ?」
ため息まじりにそういった鬼道は、呆れたように目を細めた。
部活が終わって他の皆が帰った後、帰宅準備をしているさなかにふと目に付いた鬼道の手。
細身の造りをしたそれを見た途端、あの時の事をぼんやりと思い出した。
あの手から感じた温もりは夢なんかじゃなく、だからもう一度それを感じてみたくて。
気がついたら、鬼道の手を掴んで自分の手と向かい合わせて握りしめていたのだ。
最初は鬼道も驚いたように困惑した表情をこちらに向けてきた。
でも、俺がそのまま何をするわけでもなく、ただじっと握りしめた手を食い入るように見つめながら小さく唸っていると、次第に状況に慣れたのか呆れたような顔付きに変化してきた。
「おい、円堂。聞いてるのか?」
「…うん、聞いてる」
「なら何をしてるんだ…」
本日二度目のため息は、静かな部室に響くことなく消えていく。
「…確かめてるんだ」
「何を?」
不審そうに眉をしかめた鬼道の顔が、握った手の向こうに背景としてぼやけて見える。
こうして握った手はため息とは違い、消える事なく触れ合う俺の肌にじわじわ伝わってくる。
俺と同じように熱をもったこの繊細な人は、こうして触れてみると幾分他の人よりも体温が低いかもしれない。
それとも、俺が他の人より高いだけなのか。
でも、こうして握り合っていると互いの熱が混ざってその部分だけ同じ体温になってくるから。
そうすれば、何だかあの時感じた二人の間にある長さを計れない距離がなくなったように思えるから。
不思議そうに俺と手を交互に見遣る目が細まる様子が見える。
やっぱり鬼道は繊細だと思う。
もちろん、以前とは違う温かな意味で。
この熱を手だけではなく、その身体を抱きしめて自分の想いを全て伝えれば、もっともっと近く在れるのかもしれない。
「ー…鬼道、俺…鬼道の体温、好きだぜ」
熱を共有できる事に満足しながら微笑んだ俺に、大きく見開いた目を困ったように横に流しながら、
「……俺も…お前の温度、嫌いじゃない」
照れ臭そうに素直じゃない言葉を小さく呟いたのだった。
ーー貴方の繊細な温かさが
この上なく愛おしいのです
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電波ポエム2号。
うちの書く円堂は意味不明というかアホっぽいですね。反省。
二人っていつも一緒にいるわりには触れ合う場面が少ない気がするのは気のせいですかね。いや、触れ合いはあっても一緒にいる比率にしては少ないな…と。
決して「公式でもっとベタベタ触れ合えよ。You達もっとぺたぺたねっちょりしようよ」という願いの元で書いた文章ではありません。はい。…はい。
また内容が不明な文章になってしまいましたが、読んで下さった方、ありがとうございました。
2009.9.7
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