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アイドルの受難! (AT)
アイドルヲタクなアレルヤ。現代パロ。ティエリアが普通に女の子です。







どうしてだろう。最近、何をやっても上手くいかない。
とある会社の平社員である僕は街を歩きながら悩みに悩んでいた。仕事が上手くいかないのだ。今日もまた上司に怒られてしまった。

「はぁ…」

溜め息を吐いて空を見上げる。すると、大型のモニターが目に入った。そこには最近人気のアイドルが映し出されていた。

「今日も可愛いなぁー…ティエリアちゃん」

最近人気のアイドル──ティエリア・アーデちゃんはたった16歳でトップアイドルに登り詰めたスーパーアイドルで、歌って踊って喋れる万能な子だ。演技も上手い。彼女が映画に出演すれば、たちまち大ヒット。少々クールで毒舌なのだが、またそこがいい。決め台詞は「万死に値するっ!」だ。彼女に言われたら死んでも良い。

つまり僕は彼女のファンであった。
僕の部屋にはポスターが数枚貼ってある。彼女の出た雑誌は必ず買うし、出演した映画なんかは2回以上見た。
大ファンなのだ。

「…なんか元気出てきた!」

やるぞー!と独りごちたら、周りに変な目で見られた。



帰り道。あれから僕は、なんと上司に褒められたのだ!ああ、これは。

「これもティエリアちゃんのお陰かな」

ふふ、と笑みがこぼれる。周りに人がいないので、今度は変な目で見られなかった。

「今日は何食べよ…ん?」

暗くてよく見えないのだが、誰かが倒れているのが見えた。近寄ってみようか。

「あのぅ…大丈夫ですか……?」

「んっ…」

その人は上体をゆっくりと起こし、僕の方を見た。その顔は。僕の目がとらえたその顔は、見間違えようがないあの子の顔だ。

「てぃ、ティエリア・アーデ!?」

どどどどうしてこんなところに、え、やばい、ドキドキする!正真正銘本物だ…!本物だ…!

紫の髪が揺れる。彼女は僕の発した台詞に対してひどく不機嫌そうに言った。

「声が大きい…。……だとしたら、どうするんだ?」

「え?」

「ティエリア・アーデだとして、僕を、どうするんだ?」

「えぇと…?」

見た感じだと、彼女はとても具合が悪そうだ。っていうか聞きたいことがありすぎる。どうしてこんなところに、とかお仕事とか。あぁ、彼女の視線が僕に刺さっているのが分かる。
…余計なことは聞くな、ってかんじかな。

「取り敢えず…僕の部屋、来ますか?すぐそこなんで」

「…なにする気だ?脅しとかか?それとも…」

「べっ、別に何もしないよ!困ってる人は助けなきゃ。具合、悪いんでしょ?」

考えてみれば、いきなり見ず知らずの男の部屋になんか普通行きたくないんじゃないか?さすがに不用心にも程があるような。…別に僕が何かするんじゃないかとかじゃなくて!訝しげな目でじろりと睨まれた。赤色の瞳に僕が映っている。おもわず彼女の目に見入っていると、彼女が口を開いた。赤い瞳と同じくらい赤い舌がちらりと見えた。

「…じゃあ少し休ませてもらう」

「良いの?」

「仕方ないだろう。それにこれも何かの縁だろう」

肩かしてくれ、と言われて僕は言われたとおりにする。彼女に触れたときにドキリとしたのは内緒だ。
立ち上がったのはいいが何故か彼女は歩こうとしない。どうしたのだろうか。

「足が痛い、歩けない。君…力はある方か?」

「え?…まぁ人並みには」

「僕をおぶれ」

ぶっ!とおもわず口から何かが吹き出た。そして大量の冷や汗。……今、なんて?

「だから、歩けないからおぶれと言っている」

「いやいや!だって、テテ、ティエリアちゃんをおぶるだなんて…!」

出来ないよ!生まれてこのかた女の子とまともに会話したこともあんまりないのに!ましてやおんぶだなんて…。

「早くしろ」

「……失礼します…」

よいしょっと、僕はティエリアちゃんを背負う。びっくりするほど軽かった。これがアイドルなのかなぁ。




「…狭いな」

着いてからの最初の一言は文句だった。

「それは…まぁ、仕方ないというか…」

取り敢えず適当に座ってもらう。何か飲み物は?と聞くと、紅茶、と言いながら部屋を見回している。僕は二人分の紅茶の準備をして、とあることに気付いた。
……ポスターがはってあるじゃないか…!

「…君はもしかして僕のファンか?」

「う…」

今一番聞かれたくないことだった。

「……大ファンです」

「…そうか」

それきり、ティエリアちゃんは黙り込んでしまった。紅茶が入ったので運ぶと、ティエリアちゃんが喋りだした。

「君も周りの奴等とおんなじなのか…?」

「え…?」

「君も、僕を縛ろうとするんだろう…仕事だから、アイドルなんだからって。だから逃げてきた。だけど……」

そこで言葉が途切れた。言いたくないんだろう、自分の弱い部分。

「…僕はね、ティエリアちゃんに感謝してるんだ。失敗してから、テレビで君のこと見ると、なんだか心が温まるというか…。ティエリア・アーデというアイドルがいたから僕はずっとやってこれたんだと思う」

この感情は、例えるなら図書館で本を探しているときに似ている。探しても探しても見付からない。何万冊の中から一冊を見付け出すのは難しい。僕は想像する。
必死になって本を探して、諦めかけている僕のところに、君が舞い降りてくる。そのとき、気付くのだ。ああ、君は天使なのか、と。僕になにか力をくれるのかと。

「まぁつまり錯覚なんだけど。だとしても僕が君のことすきなのは変わらないし、今日君と話せてああ、こういう人なんだ、って感じたし。なにより君はアイドルである前に一人の女の子でしょう?」

「……。…変わった奴だな」

「よく言われるよ」

その言葉を聞いてティエリアちゃんは笑った。さっきまでの顔とは違う、明るい笑顔が彼女の顔にはよく似合っていた。少し冷めたと思われる紅茶に口をつける。

「…ティエリアでいい」
「え?」

「呼び方。ティエリアでいいから。それと、」

ここで言葉を切り、下を向いて口をパクパク動かして、また前を見て続きを言う。

「あ、ありがとう…。ちゃんと、“僕”を見てくれて。アイドルじゃない、僕を」

その言葉を言った瞬間の彼女の顔は、今までに見たどの顔よりも綺麗だと思った。やはり彼女はアイドルじゃなくても美しいのだ。

「良かったら、」

「ん?」

「良かったら今度僕が仕事しているところを見に来るといい。というか来て。来い」

「え、ええ…!?」

なんだこの展開は!先程とはうって変わってティエリアちゃん…じゃなくてティエリアは得意そうな顔だ。

「え、でも邪魔になるだけだし…。そもそも仕事してる場所とか教えちゃ駄目なんじゃ…?」

「問題ない。僕の恋人だと言えばいい」

「こっ、恋人!?」

もっと問題だ!あのティエリア・アーデと恋人だなんて!……決して、決して嫌なのではなくて、ティエリアに迷惑がかかるのではないか、と思う。

「じゃあ、取り敢えず僕のプライベートの番号を教えといてやるから、暇なときかけてくれれば後ででも必ず連絡するから」

「え、え?ちょっと!」

その辺にあった紙にメモ書きをして立ち上がるティエリア。しかしその場に座り直す。瞬間、グーと空腹を告げる音がした。二人分も。そういえば夕御飯を食べていない。

「お腹空いた……しばらくはここにいてやる」

「ええええっ!」

「そうだな…一日くらいが良いかな。早くご飯を作ってくれるか?」

早く、早く、と急かされる。仕方ない、と思って夕御飯を作り始める。ティエリアは蓋を開ければ我が侭な女の子だった。こっちの方がすきだなって思う。っていうか仕事はどうするんだ。

「休みの連絡をする。一日くらい許してくれるよ」

「そう…」

体がもたない気がする。ここに居座るなんて!
……アイドルの気まぐれか、はたまた僕のことが気に入ったのか。どちらにせよ、僕の抱える心配事は増えそうだ。

「ねぇ、ティエリア?」

「な、なんだ」

「明日は僕、仕事が休みだから君の仕事してる姿見たいな」

「ほ、本当か!?なら明日は朝早くから出掛けよう!」

赤い瞳をきらきらさせて嬉しそうに言う。こういう顔は年頃の女の子の顔だ。僕の前でだけ、そういう顔して欲しい。
鼻歌を歌いながら料理ができるのを待ってる彼女は本当に可愛い。しかし僕の手が止まっていることに気付いて早くしろ、と言ってくる。


心配事はたくさんある。だけど彼女に困らされるのなら喜んでそれを受け入れよう。だって僕は彼女のこと大すきなんだから!


end.


――――――――――

強制終了。
着地が出来ないままずるずると長くなりました。ううん、でもこれも続き書いてみたいな。今のところ恋人未満?みたいな感じなので、くっつけたい。少なくともティエリアちゃんはアレルヤが気になっています。
読んで下さりありがとうございました!


もに


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