君についての考察 (AT)
君は真っ白だ。
目を向けられないくらいに。
同時に、壊れている。
抱きしめたくなるくらいに。
それなら僕は、どこまでも汚れている。
「アレルヤ」
君が僕を呼ぶ声は、まるで僕に対する洗礼のようだ。
「なぁに」
「…またなにか変な事を考えているな」
「そんなことないよ」
抜ける程白い彼の頬に手を伸ばしたら、その手を払われた。僕のことを睨む瞳の、その赤色が痛い。
「誤魔化すな」
射るような視線が僕を貫く。目を逸らせないのは君がすきだからだと勘違いしたい。実際は、僕が本当に考え事(変かどうかは別として)をしていて、それを見透かしたティエリアに驚いたからである。
「…たとえば、ね?」
「なんだ」
「僕がなんらかの宗教に入っていたとするよ。キリスト教、イスラム教、仏教とか…。何でも良い。そしたら僕には敬うべき神様がいる」
ティエリアが怪訝そうな顔をして僕の話を聞いている。話すの止めようか?と聞くと、続けろ、と返答。どうやら話さなければいけないらしい。
「神様とは、絶対だ。神を信じる者にとっては。まぁこの場合は僕になるね。そして同時に、すがり付く対象でもある。依存だね。神を信仰することでしか生きていけないくらいの依存」
「君は神の存在を信じているのか?」
「違うけど、人はみんな必ず信じてしまうよね。困ったときの神頼みとかいうし」
虫の良いことである。完全なる無神論者でも、自身が死に至るときには、あぁ神様などと言い出すのだ。
宗教にすがっているのは逃げではないかと僕は考える。別に悪いことじゃない、誰だって逃げたいことはある。
「仕方のないことなんじゃないかな。……僕だって、」
「いいか、君がバカなことを言う前に言っておいてやる」
僕の台詞を遮ってティエリアは言う。次に言われるであろう言葉を想像すると、目眩に似た感覚を覚えた。
「僕は君のカミサマとやらじゃない。僕は、“ティエリア・アーデ”だ」
目眩どころじゃない、なにか刃物を突き付けられたような感覚が僕を襲う。
白く眩しい君は神のようだと思っていた。だって僕にはそうにしか見えないんだよ。僕を救ってくれる、唯一の存在。
「…聞くまでもないじゃないか…。全部お見通しなら、さ」
ハァ、と溜め息を吐く。なんだか、足元がなくなっていくような気分だ。そんな僕を見やり、ティエリアは顔を覗き込みながら言う。
「まったく、君の馬鹿げた考えなんて、僕しか理解してやれないぞ」
……今何かさりげなく重大で大切で凄く聞き逃せないなにかを言わなかったか。
僕しか…?
「…えっと……」
「はっきり言わないと分からないのか?」
腕組みをして、白い頬を赤く染めながらティエリアは良い放った。
「僕は君の神じゃない、君の恋人だ」
「…ティエリア!」
細い体に抱きついたら、離れろ!と言われたが構わず彼を腕の中に収める。
「…本当に、馬鹿げた考えだったね…。それでも君は大切だからね」
「なんなら僕を敬ってくれても良いぞ」
「…考えとくよ」
ああ、君。
美しい君。
君が神様だろうと恋人だろうと、僕は君に依存してしまいそうだ。
だって君が愛し過ぎるからね!
end.
―――――───
シリアスかと思いきや甘くなりました。
着地点が微妙ー…。
もに
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