重力の関係2
プールサイドに立って、水面を眺めてみる。ゆらゆらと、月が映っていた。
同じくプールサイドに立っているアレルヤはもう既に制服の裾を捲って、準備はばっちりだった。…背中を押したくなるのは仕方のないことだろう。
「制服どうしよ…うわっ!」
バシャン、と派手な水しぶきをあげて、アレルヤはプールに落ちた。
正確にいうと僕の手によって落とされた。
飛び込み台の脇に立ち、アレルヤが上がって来るのを待つ。
……おかしい、上がってこない。
この学校のプールは水深1.6メートルだ。しかし、アレルヤの身長なら全然平気だろう。平気…の筈だ。
「…アレルヤ?」
心配になって水面を覗き込む。すると、
「えいっ」
「っ!?わ、」
水の中から手がのびてきて、僕を水の中へと引っ張った。案の定、僕はプールへダイブした。
「ぷはっ、あ、アレルヤ!」
「僕を落とした仕返し。大丈夫?」
自分が引っ張ったくせに、人の心配をする。こういうところがお人好しなんだ、まったく。
「浮いてこないから、君になにかあったのかと思った…」
「僕のこと、心配してくれたんだ?」
アレルヤはニヤニヤとこちらを見る。
…コイツ、わざとだな?
「…し、」
「え、なに?」
「万死と言ったんだ!」
顔に水を思い切りかけてやる。バチャバチャと水音を立てながら後ろに下がる。アレルヤが止めてよー、とか言っているが、聞こえないフリをしよう。
突然に、足に鋭い痛みがはしった。
「っ痛!」
「ティエリア!?」
足が動かない。僕の顔スレスレにある水に沈んでしまう。急なことだったため、パニックになり、水を沢山飲んでしまった。
(まずい、足をつったか)
久し振りに泳いだ(といっても歩いただけ)から体が慣れてないんだろう。
冷静に考えていると、急に体が持ち上がった。
「大丈夫!?足つったんでしょう!?」
アレルヤだった。心配そうな顔をしている。
ただ足をつっただけなのに。
ふと気付くと、アレルヤの顔が近い。どうやら両膝の裏と脇の下に彼の腕がまわって抱えられているようだ。つまりお姫様だっこ。
そのことに気付いてしまえば、顔は赤くなっていく。
「は、早く降ろせ!足が痛い!」
「ああ、うん、本当に大丈夫?顔が赤いよ?」
「うるさい!」
なるべく顔を見られないように僕はプールサイドに座る。足の痛みが治まるのを待っていると、アレルヤが足を揉んできた。
止めろ、と言うと痛いでしょ?と言ってきた。
実をいうとかなり痛い。仕方ないな、と言ってアレルヤのすきなようにさせていると、痛みがなくなっていった。
「……」
「もう大丈夫かな。さぁ、入ろうよ」
「…すまない」
「別に?いつもこんな感じゃない」
昔から。
プールの水は冷たくて気持ちが良い。夜空を見るために仰向けに浮かぶ。そのまま壁を蹴って中心へ移動すると、星空が一面に広がって、水面にも映る。まるで、
「宇宙にいるみたい?」
「…君は人の心が読めるのか?」
「どうだろう。君限定かな」
答えになってない。
「なんで分かった」
「だってそうでしょう。今、僕は宇宙に浮かんでいる。君と一緒に」
「だから?」
「君が、宇宙に吸い込まれそうだったから」
彼は空中に手を伸ばして、何かを掴むような動作をした。
「僕の手の届かない遠くへ行ってしまいそうだったから」
「……」
「地球に重力があって良かった。だって、僕から離れてしまわないように出来るのだから」
彼は、僕の横に立って空を見上げていた。まるで何かを願うように。
ふいに目線が下に向けられる。下といっても、そこには僕しかいないので、自然に目が合う。
「僕は、君から離れたりしない」
自然に口から言葉が洩れる。
「どうして?」
「君がいないと、僕はまたプールに入れないからな」
僕がそう言うとアレルヤは目を丸くして、それから二人で大笑いした。
誰もいないプールに、二人分の笑い声が響く。こういうときに感じる感情をなんて言い表したら良いんだろう。
「また今度、来ようか」
「ああそうだな。次はちゃんと用意をしてこよう」
「何の?」
僕は自分を指差して答える。
「明日、どうするつもりだ?こんなに濡れて」
「あー…制服、か」
苦笑いをした彼の顔を、僕は忘れられそうにない。
end.
――――――――――
長かった!そして意味分かんない。
幼なじみ同士の日常を書きたいなと思ったらこんな風に。オチない。
こんな文章でごめんなさい。
また書きたい!幼なじみ!
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