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変わらぬ景色


久しぶりに日本に戻って来たら何だか懐かしくなって気が付いたらバイクの鍵を取り出し、それに跨がって走っていた
行く宛なんて無い。只、久々にバイクで走りながら風を受けたかった

季節は春。まだ風が冷たい。そろそろ日も沈む頃だから更に空気も冷え込んできた


「………」


しかしそんな事はお構い無しに走り続けた。見慣れた景色が酷く懐かしくて仕方ない

ああ、戻って来たんだ

そう思いながら更に走り続けていけばある場所でバイクを止めた

人気の少ない海

学生時代は良くアイツと来ていたな…何て懐かしみながら日の沈み暗くなった海を眺めていた
が、不意に背後から煩い程聞こえるバイク音

人が思い出に浸っているというのに…

邪魔をする奴は誰だ、と不快感を胸に表情を歪めながら音のする方へと顔を振り向かせた
途端、瞬の表情は驚きのものへと変化する


「……ま、かべ…?」

「Yes、久しぶりだな…瞬」


何故此処に、と聞きたかったが驚きの余り声にならなかった。確かに自分を日本に呼び戻したのは他ならぬ翼だ。自分だけじゃない、B6メンバー全てを呼び戻していた。それは知っている
しかし、こうやって約束も無く逢う事になるとは思っていなかった為にやはり動揺は隠せない

先程まで翼の事を考えていたのに

いざ目の前にその人物が現れればどう対応していいか分からない
気の利いた言葉も何も出なくて暫し押し黙っていると行動を取ったのは翼の方だった


「髪、切ったのか。随分短くなったな」

「……あ、ああ…」


距離を詰めるように瞬の傍へと歩み寄り、学生時代よりも随分と短くなった髪へと手を伸ばす
綺麗な長髪だったのに…そう思うが髪型一つ変わったところで瞬が変わったわけでも無い


「……っ」


見た目は美人になったが中身はやはり変わってなさそうだ
髪に触れるだけで照れて頬を赤くし、一歩後退するところなんてそのままじゃないか


「…変わらないな、お前は」

「そういうお前も……」


変わらない、そう言おうとしたのに言葉が出なかった
翼の唇が瞬の唇に触れて言葉を発することを忘れてしまったから

久々に感じた、柔らかな唇

多少の恥ずかしさはあったがそれ以上に、もっとその唇に触れたい…そう思ったら今度は瞬から唇を重ねていた
瞬の行動に気を良くした翼はそのまま両腕を瞬の背に回して抱き締めた。久々の再会を噛み締める様に

柔らかくて、暖かい

学生時代から何も変わらない

この場所で逢う事も

腕の暖かさも


何もかも、変わらない


「真壁…ッ…」

「…瞬、会いたかった。お前の事を考えて走っていたら、知らぬ内に此処に来ていた」


まさかお前が居るとは思わなかったがな

何て笑う翼につられる様に瞬も笑っていた

何だ、俺達は同じ事を思って居たのか


「…同じだな、俺も真壁の事を考えていたら此処に居た」

「イシンデンシン、というやつだな」

「そうだな」


互いに笑い合って身体を寄せればもう一度どちらともなく唇を重ねた
耳元へと響く波音が心地好い

俺達は少し離れて、知らない間に身体の成長はしていたが中身は…気持ちは変わって居なかった
それが嬉しかった


「…瞬、これから講師として、またお前の傍に居られる。それも聖帝学園で」

「ああ…立場は変わったが昔に戻ったみたいだ」


B6全員が揃って、同じ学園内に居て
大切な存在が同じ空間に居る

離れて分かった。それが、どんなに幸せだということを


「お互い頑張るか」

「ああ、ゾンブンに扱いてやる。今から楽しみだ」


此処から俺達の一年が、始まる




―――――

久々に再会した二人のお話。グダグダ…;






あきゅろす。
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