小悪魔、限定
夜も随分更けた頃、空気の冷たさに身体が震えて閉じていた瞼がゆっくりと開く
まだ眠たげな瞳を持ちながら顔を上げ今居る場所を確認する
此処は聖帝学園の職員室。そこで漸く今この場に居るかを思い出す
今日の見回りは自分だ。他の生徒や教師が帰るまで待っていなければいけない…そう思ったら自然と意識が遠退いて、気付いたらこんな時間
「………もう、22時…」
職員室の時計を見れば22時過ぎを差していた。早く見回りと戸締まりを済ませなければ帰れない
怠さに襲われながらも鍵を片手に持ち、座っていた席から立ち上がり瑞希は職員室を後にした
―――――
広い学園内を見回り終えた頃には22時半を過ぎていた。そんな時間になれば流石に小腹も空いてくる
静かな空間に小さな瑞希の腹の音が響き、誰も居ないのに何だか恥ずかしくなった 。それを打ち消す様早足で歩いて学園内を出る。それと同時に聞こえた煩いエンジン音と眩しいライトの明かり
「……っ、何…?」
余りの眩しさに目を細め手を翳しながらその音の正体を掴もうと視線を向ければ、良く見知った人物がそこに立っていた
「先生発見」
「……方丈、君?」
聖帝学園生徒会副生徒会長である方丈那智、彼が立っていた
何故こんな時間に…煩い音の正体はバイクだったのか…
何て考えていると那智が傍に寄って来て瑞希へとヘルメットを投げた。反射的にそのヘルメットを受け取る瑞希
「……これ、何?」
「貸してあげる。だから早く乗りなよ、先生。送ってあげるからさ」
「何で…送ってくれるの…?」
「夜道は危ないから。また何処かで寝たりしたら大変だし…いいから、早く」
これ以上口答えはさせない、とでも言うように那智は瑞希の腕を掴みバイクの傍まで歩ませる。そしてバイクに跨がせる様にグイグイと何度も身体を押し、根負けした瑞希はバイクに跨がり先程受け取ったヘルメットを被る。それを見て満足そうに笑った那智もバイクへと跨がって自分のヘルメットを被り、顔を振り向かせ瑞希の腕を掴めばしっかりと自分の腰へと回させる
「先生、ちゃんと掴まってなよ?じゃないと…落ちるから」
何処か脅しを含んだ口調で言われてしまえば流石に怪我はしたく無いと思いしっかりと那智の腰にしがみつく。身体をピッタリと背にくっつければ那智の体温を感じる。それが心地好くて自然と和らいだ
「……これで、いい?」
「ん、いいよ。それじゃ行くよ?しっかりと掴まってて」
念を押すようにもう一度言葉を掛けてからアクセルを回しバイクを走らせた
冷たい風を身体で受け寒さを感じるも迎えに来てくれた那智の気持ちと体温を感じれば自然と寒くは無くなった
バイクで走っている間はお互い一言も話さなかったが触れ合っている身体の温もりに二人の表情は柔らかなものだった
暫く走り続け瑞希の住むマンションの前に着けばバイクを止め被っていたヘルメットを外し、那智は瑞希の方へと顔を向ける
「先生、此処だよね?」
「ん、此処…良く知ってたね…」
「まぁね。先生の事なら知っていたいからさ、調べちゃった」
あはは、と軽く笑う那智につられて瑞希も少し照れつつも笑みを浮かべた。が、それもつかの間。那智の表情が途端険しくなり瑞希の身体を強く抱き締めた
「……方丈、く…?」
「………狡い」
突然抱き締められた意味がわからず声を掛けようとするもその前に那智の呟く言葉に瑞希の問い掛けは消された
狡い?
意味がわからない。問い掛けようとするも聞いていいかわからずに瑞希は押し黙った。暫し沈黙が訪れた後、口を開いたのは那智の方だった
「先生と同じ場所に住んでる先生達が、狡い。おれは学校でしか先生と居られないのに」
「………」
「それに、おれの知らない先生を知ってる…だから…」
狡い。そう言いたかったのに、那智は言葉を続けなかった。正確に言えば続けられなかった
柔らかな、暖かな感触が唇を塞いでいたから
その正体は、瑞希の唇
「……っ、せんせ…?」
突然の瑞希の口付けに戸惑いが隠せない。今までだって、一度も瑞希からキスをしてくれたことがなかったから
驚いた表情を浮かべたまま瑞希を見つめていればポンポン、と柔らかな手つきで頭を撫でられた
「いい子、いい子…」
「…先生、子供扱いしてない?」
「してない…。方丈君が、いい子だから…撫でたく…なった。それに…」
嬉しかったから、と続けて言えば次は逆に那智の顔が赤くなった
つまりは、他のB6メンバーに嫉妬していたということ。こういうところは本当に子供のようだ、と思いつつも愛しさを感じずには居られない
「……大丈夫。方丈君も…みんなが知らない僕、知ってるから」
自分からキスをしたり、
誰かにこうやって触れたり、
身体を開いたり、
恥ずかしさに赤くなったり、
そういう僕を知っているのは、方丈那智――…君だけ
「…ん、そうだね。意外とエッチな先生を知ってるのおれだけだもんね」
「……っ!」
先程とは変わって意地の悪い笑みを浮かべ瑞希の頬を撫でれば一気に赤くなる瑞希の顔
信じられない、といった表情で那智を見るも恥ずかしさの余り声にならない
「あははっ!先生かわいい〜っ!」
「…っ、意地悪…!」
本当に、何て小悪魔
「本当、可愛い…おれの先生、愛してるよ」
ちゅ、と小さなリップ音を立ててキスされれば更に赤くなる顔
敵わない…この小悪魔には
でも、そんな小悪魔を好きなのは僕
どうしようもない
「……僕も、好き」
―――――
何を書きたかったのかわからなくなりました…(汗)
嫉妬する那智とそれを慰める瑞希が書きたかったんだけど…あれ?因みに那智の性格は裏の性格を知られた後、という設定
お粗末様でした…;;
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