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嫉妬、独占欲





ハッキリ言って、腹が立つ。

アイツにくっついているお前も、お前にくっついているアイツも。


「成宮、ちょっとコッチ来い」

「んぁ?な、何でぇ!いきな……っ、おい!」


突然アホサイユにやって来た那智に驚いている中、有無を言わさない状況で突然腕を引かれ、天十郎は那智に引きずられる。
千聖お手製のケーキを食べている最中だった為に、流石に黙ってはいられなかった。


「っ、おい!離せ!まだケーキ食ってる最中なんでぇ!」

「うるさいなぁ、そんなの関係ないね」


名残惜し気にフォークをくわえたまま那智の腕から逃れようとするが那智の力も強く、逃げる事は出来そうにない。


「ああぁっ…俺様のケーキー!」

「安心して、天ちゃん。チィちゃんの作ったケーキはオレが残さず食べてあげるよン。ASI、安心していってらっしゃい!」


残っていた天十郎のケーキ皿を持ちながらアラタは満面の笑みを浮かべ、二人の様子を見守る。
そしてちゃっかりと天十郎のケーキをフォークで切り分けて食べ始めた。


「安心出来るかってんでぇ!はーなーせーっ!」

「………」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ天十郎の口を塞いでしまおうかと思ったが、そうする前にとにかくこの場から離れたかった那智は無理矢理引っ張ってアホサイユを後にした。


「くあぁ…、帰る時間までには帰って来い」


扉を出る前に千聖の声を聞きながら。

その声が無性に苛立って小さく舌打ちする。
その音に那智の機嫌が悪いという事を察したが、何故機嫌が悪いのか理解出来ずに首を傾げながら天十郎は那智に引きずられて行った。





―――――





「……で、いきなり何でぇ?」


使用されていない空き教室へと連れられた天十郎は椅子に座ってケーキを食べれなかった不満と苛立っている那智への疑問、両方を抱えながら問い掛けた。
が、空き教室に来てから那智は眉間に皺を寄せたまま口を閉ざして何も喋ろうとはしない。


「……………」

「……………」


沈黙が続く。


「……だーっ!黙ってたら何もわっかんねぇだろーがっ!」


続く沈黙に耐え切れず、バン、と大きな音を立てて机を叩きながら身を乗り出して顔を近付けた。


「……うるさいよ、成っちょ」


耳に響く大きな声にさらに眉間に皺を刻みながら両手で耳を塞いで顔を背ける。

連れて来たのはいいものの、まさか嫉妬してあの場から連れ去りたかった、と性格上素直に言える訳が無い。
だから、何を言えばいいか分からずにただ口を閉ざしていた。


「……用がないなら俺様戻るぜ?アラタから千の作ったケーキ取り返しに行く」


先程目の前で自分の分のケーキを食べられてしまった事が相当悔しかったらしく、それを思い出して言えば座っていた席から立ち上がる。
が、その前に那智に腕を引かれて行動を制止されてしまった。


「う、わっ…!?」


腕を引かれた反動で身体がグラつきバランスが崩れ、天十郎の意志とは関係なく那智の腕の中へと収まってしまう。


「いらっしゃい、成っちょ」


天十郎の身体を受け止めると同時にしめた、と言わんばかりに強く天十郎の身体を抱き締める。
自分から逃さない様に。


「成っちょは大人しくおれの傍に居ればいいんだよ、わかった?」


小さなリップ音を立てて額に口付けを一つ落とし、加減を忘れて強い力で天十郎の身体を抱き締める。


「うぐっ、く…くるし…離せっ…!」


流石に強過ぎる力に表情を歪め、何とか那智の腕からもがくがそれも無意味に終わる。
ガッチリと抱き締められている為に満足に身動きが取れない上、酸素も上手く取り込めなくなってきて両腕から力が抜け、ダラリと腕を力無く下げた。
その様子に気付いた那智は漸く腕の力を緩め、苦しそうな表情を浮かべている天十郎の顎に手を掛けて顔を上げさせ唇を重ねる。


「ん、んっ…」


突然交わされた口付けに驚いていると、生暖かな息が送られてきた。
酸素不足になっていた状況とはいえ、送られてくる息を吸う気にはなれずに力が抜けた手を無理に動かして弱い力で那智の背を叩く。


「ッ、ちっ…」


仕方なく唇を離し、舌打ちを一つ漏らしてからそのまま傍にあった机の上へと天十郎を押し倒す。


「おれから逃げる気?」

「っは、はぁ…、ケーキ、食いに行くって…言っただろうがぁ…」


机に身体を押し付けられ、身動きが取れないまま不足していた酸素を取り込みながら小さな声色で答える。

ケーキを食べに行く、なんて本当は只の言い訳だった。

確かにケーキは食べたかったが、それ以上に不機嫌さを滲み出している那智にどう対応していいかわからなくて、この場から逃げ出したかった。
でも、那智はそれを許さない。


「だーめ。ケーキなら後で買ってやる…だから、居ろ。アイツらのとこになんか、行かせない」

「……おめぇ、何言ってんだぁ?」


返って来た言葉に那智は思わず眉間に皺を刻む。
天十郎は何故那智がそんな事を言うのか全く理解出来ていなかった。
多分天十郎以外の周りの人間は気付いている。那智の嫉妬心や独占欲に。

だから、先程アホサイユから天十郎を連れ去っても何も口出しはして来なかった。
だけど当の本人はそんな事に全く気付かない。


(何で気付かないんだよ、アホか…あ、元々か)


天十郎の性格を考えれば気付かれないのも仕方ないかとも思った。かと言って、それを口にするのも何だか嫌だった。

ならば、今日は行動で示してみようか。


「わからないなら、わかるようにしてやるよ…覚悟しろよ」


口端を歪めで笑みを浮かべれば危険を察知したのか、慌ててもがく天十郎の身体をしっかりと抑え付け、反論出来ないように口を塞いでヌルリとした舌を捩込む。


「ん、んぅ…ッ!」


咥内に侵入してきた舌から逃げようと舌を引いてみるも直ぐに捉えられ、吸い上げたり咥内を好きに這い動かされて身体から力が抜けていく。
逃げる気力も無くした天十郎は力の抜けた腕を机からダラリと落とす。
その姿を見て那智は口元を歪ませた。


今日はもう逃がさない。

おれの愛をたっぷりと教えてやるから。





―――――


10000Hitアンケート三位の那智天でした。
那智が嫉妬した那智天、というコメントが一番多かったのでそういう内容にしたつもりだったんですが…ど、どうでしょうか?(汗)
何だかぐだぐだな内容になってしまってすみません…。


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