LOVE*SKETCH
「……また寝てる」
授業を終えて職員室へと戻って来れば机に伏せって寝ている瑞希の姿を見つけ、思わず吹き出して笑ってしまった。
悟郎は瑞希を起こさない様に静かに椅子を引き、瑞希の隣にある自分の席に腰掛けてぼんやりとその姿を見つめた。
こういうところは、学生時代から何ら変わって居ない。
五年の月日を得て、皆それぞれの道を歩み、再会する度に容姿や心が成長していて、何処か寂しく感じられたけども瑞希のこの姿を見ると何故か安心出来た。
「それにしても、本当よく寝るよねぇ」
クス、と小さく笑みを浮かべながら手を伸ばし、五年前に比べ随分と伸びた髪へと触れる。その髪は予想していたよりも柔らかく、サラリとしていた。
「綺麗な髪…うん、満点」
「クケー…?」
髪を撫でて満足げに笑っていると瑞希の傍で寝ていたトゲーが目を覚まし、小さく鳴いた。それに気付いた悟郎は慌てて人差し指を口元に当て、トゲーに向けて静かにする様促す。
「シーッ…瑞希が起きちゃうから、ね?」
小さな声色で告げれば納得したのか、頷くトゲーを見てホッと一息つく。
次は空き時間。此処で瑞希が寝ているということは、多分瑞希も空き時間の筈。
ならば、と瑞希を起こさないようにスケッチブックを取り出して眠る姿をスケッチしていく。
「んー…」
微動だにしない姿をサラサラと鉛筆で描き、自分の満足が行くまで何度も、何枚もスケッチブックを捲って描き続ける。
暫く集中して描き続け、漸く満足の行くスケッチが取れれば鉛筆を机の上に置いて静かにしているトゲーへと向けた。
「ホラ見て、トゲー。ミズキだよ。ポペラ上手く描けてるでしょ?」
スケッチブックを見せながら言えば机の上でその通りだ、と言わんばかりにトゲーが動く。その様子を見て満足そうに笑いながらスケッチブックに描いた瑞希の姿をそっと撫でる。
「でしょ?だってね、ボクの気持ち…たくさん、たくさん込めてあるんだから」
穏やかに眠る瑞希の寝顔を頬杖をつきながらぼんやりと見つめた。
五年経っても全く変わらない寝顔。
自分よりも随分と背も高い男なのに、寝顔は相変わらず幼く見えた。
「可愛いなぁ…悔しいけど、ボクよりポペラ可愛いよ」
飽きる事無く寝顔を眺めていたが、不意に身体を近付けて柔らかな髪にそっと口付けを落とす。
「スキ、スキ、ダイスキ…ミズキ」
「………ん、知ってる」
「み、ミズキ…?起きてたんだ」
眠っているとばかり思っていた瑞希の瞳がゆっくりと開かれ、言葉を返されれば驚いて肩を跳ねさせた。
反射的に身体を引いてしまった悟郎を見ながら伏せていた身体を起こし、顔を近付ければちゅ、と鼻先に口付ける。
「スキ、スキ、ダイスキ……悟郎」
突然与えられた口付けと先程悟郎が言った言葉と同じ言葉で愛を伝えられ、微かに赤くなってしまいながらも両腕を伸ばして自分より大きな身体を目一杯抱き締めた。
「全くもう、可愛いなぁ…ミズキは。敵わないよ…でも、」
好き、の気持ちだけは絶対に負けないよ。
口端を上げて笑みを浮かべれば今度は髪では無く、唇に口付けて柔らかな唇の感触を味わった。
傍でトゲーが鳴きながら騒いだが、その声は悟郎の耳には全く届く事は無い。
視界に映るのは愛しい相手だけ。
「ミズキ、大好きだよ」
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小ネタ的な話を書いてみたくて、ゴロ瑞書いてみました。
Zのゴロちゃんは男前だと思う!
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