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誕生石





今日はやけに学園内の女子が騒がしい。
あちこちでそわそわしている女子を見てアラタは不思議そうに首を傾げた。

そんな中、タイミング良く担任の姿を見つけ、傍へと駆け寄った。


「ティンカーちゃん、ちょーっといいかな?」

「あ、アラタくん。どうしたの?」


生徒であるアラタが傍に来た事により、笑みを浮かべながら見上げる姿を見てやっぱり女の子はいい、なんて思いながら疑問に思っていることを口にした。


「あのさ、何だかお花ちゃん達が浮足立ってるみたいなんだけど…IKN、一体これは何事?」

「ああ、それは多分――…」





―――――





「…成る程ねぇ」


担任である真奈美から理由を聞けば女子が浮足立っている理解が分かった。それと同時にショックを受けてしまった。
何も知らない自分に。


「今日はね、慧くんと那智くんの誕生日なの」


可愛い可愛い相手の誕生日すら知らなかった自分に苛立った。しかし、苛立っていても何も始まらない。
今からでも出来る事はある。今日という日はまだまだ時間があるのだから。

そう思えば授業なんて全て放ってアラタは学園を飛び出した。





―――――





「……ふう」


生徒会室で慧は一人休息を取っていた。
廊下に出れば女子生徒に囲まれてプレゼントを押し付けられ、身動きが取れなくなる。そうなっては見回りどころではない。
同じく誕生日の那智は上手く交わして何処かへ行ってしまったが生憎慧はそういうことに対して要領は良くなかった。
それを見た生徒会メンバーは慧を生徒会室へと押し込み、室内業務に集中するように頼んだ。


「全く、僕としたことが見回りに行けないなんてな…」


何度目かになる溜息を漏らした。が、溜息を漏らし愚痴を零したところでどうにもならない。
任せられた業務を片付けてしまおう、そう思った瞬間ノックも無しに生徒会室の扉が開かれた。


「HAPPY BIRTHDAY、お兄ちゃん!KSH、今日は素敵な日だね!」


開かれた扉の向こうからは薔薇の花束を抱えながら現れたアラタに慧は本日最大の溜息を漏らした。そして、思い切り机を叩きながら勢いに任せて立ち上がる。


「……、嶺!関係者以外は立ち入り禁止だ!それにノックもなしに来るとは何事だ!」

「ノンノン、こんなス・テ・キな日にヤボなことは言わないの」


怒る慧に対しアラタはそれを軽く受け流し、慧の傍へと歩み寄れば抱えていた薔薇の花束を差し出すと同時に慧の唇を奪う。
余りの突然の行動に真っ赤になりながらフリーズしてしまった。


「っ、ッ……!」

「あ、ヤバ…ちょっと、お兄ちゃん?……慧?」


普段は呼ぶことのない名前を呼ばれ、直ぐにフリーズは解かれたが、その代わりに赤くなっていた顔が更に赤くなってしまう。


「っ、な…か、勝手に名前を呼ぶな!」

「あー、ハイハイ…悪かったから怒らないでよ。ね?」


赤くなりながら怒る慧に肩を竦めながら謝罪を口にし、花束を慧の腕に押し付けながら片腕でそっと慧の身体を抱き締める。
腕の中に収められ、伝わる体温に怒っているのも馬鹿らしく思え、高ぶらせていた気を落ち着ければアラタは雰囲気が柔らかくなったことを察し、ホッと一息ついた。


「……ゴメンね、お兄ちゃん」

「…何がだ?」


暫く訪れた沈黙を破ったアラタの一言の意味が分からず、視線を合わせればアラタは困ったように眉を下げた。


「いや、実はね。今日になるまでお兄ちゃんの誕生日知らなかったの、オレってば」

「まぁ、僕はお前に言ったことはないからな。それがどうした?」

「どうした…って、そこ問題でしょ!?TJM、チョー重要問題!」

今日一日気にしていたことを軽く流されてしまい、アラタは焦りながらも言葉を続けた。が、アラタが何故焦っているのか全く理解出来ない慧は眉間に皺を寄せながらアラタを見遣る。
自分が誕生日を覚えていなかったことに対して全く気にしていない慧にアラタは思わず肩を落とした。


「…そうだよね、お兄ちゃんってそんなキャラだった…まぁいいや」

「?」


首を緩く左右に振り、気持ちを切り替えれば薔薇の花束をしっかりと慧に抱かせ、ポケットから小さな箱を取り出してそれを開いて見せた。
中にはルビーとラピスラズリで作られたデザインが同じピアスが入っていた。


「はい、誕生日プレゼント」

「誕生日プレゼント…って、僕はピアスは開けていない」


生徒会会長をしている慧はピアスなど開けてはいない。髪で隠れるからといって、開ける気にはならなかったからだ。


「ンフッ、知ってるよ。だから、今からオレが開けてあげる」

「…は!?」


ポケットからピアッサーを取り出し、口端を上げながら笑うアラタを見て恐怖を感じ、慌てて逃げようとしたがしっかりてアラタに捕らえていて出来なかった。


「ちょちょーっと大人しくしてて?大丈夫、すぐ終わるからね」

「ッ、貴様…!」


文句を言ってやろうと思ったが耳にピアッサーをあてられ、言葉を飲み込んだ。意を決して目を閉じ、大人しくすれば直ぐに音を立ててピアス穴が開けけられた。


「ッ…!」

「痛かった?ゴメンね」


微かに流れた血をペロリと舐められ、ゾワリと背筋を震わせるもその感覚に堪えた。そうこうしている間にアラタはラピスラズリのピアスを慧の耳に付けた。
そして残ったルビーのピアスを付けようとアラタは自分の耳に付いているピアスを外し、代わりにルビーのピアスを耳に付けた。


「よし、これでカ・ン・ペ・キ」


互いの耳に付けられたピアスを見てアラタは満足そうに笑い、耳に軽く口付けた。


「何が完璧だ、全く…勝手にピアスを空けるなんて」

「いいじゃない。ね、お兄ちゃん」

「今度は何だ?」


勝手にピアスを開けられ、不満げな表情を浮かべる慧の機嫌を取るように軽く口付けながら互いの耳に付けられたピアスを交互に指差す。


「お兄ちゃんの耳に付いているのは12月の誕生石のラピスラズリ、オレの耳に付いているのは7月の誕生石のルビーなんだ」

「……ちょっと待て、それは逆じゃないか?」

「ノンノン、逆じゃない。これで正確だ・よ」


本来ならば逆の筈、そう言いたげな慧の前で人差し指を左右に振ってみせる。


「お兄ちゃんにはオレ、オレにはお兄ちゃん。こうしたらいつでも一緒、耳を触ればすぐに思い出せるってワケ」

「な、なっ…!」


パチン、と片目を閉じてまだ付けたばかりのピアスへと触れてみせれば落ち着いていた慧の気持ちは動揺し、また真っ赤になってしまう。
そんな慧を心底愛おしいと思いながら強く抱き締めた。


「もう、本当に可愛い…食べちゃおうかな?」


動揺し続ける慧に悪戯に笑みを向ければゆっくりと身体を机の上へと押し倒す。
倒された瞬間、慧が抱えていた薔薇の花束が落ちてしまったがそれを気にする余裕はなかった。


「み、嶺!こ、ここ此処をどこだとっ…!」

「生徒会室?ンフッ、大丈夫。鍵掛けてきたから」

「そういう問題じゃ…んむっ!?」


騒ぐ慧の身体を机へと押し付け、唇を塞ぐ。
余りこういう経験のない慧はこれで直ぐに大人しくなってしまうのをアラタは知っていた。


「フ…、まだまだ時間はあるんだから、YAA、ゆっくり愛してアゲル」


HAPPY BIRTHDAY、慧

甘く低い声で囁かれ、抵抗という選択肢を忘れて慧は腕をアラタの背に回し、そのまま身を委ねた




☆‥‥+‥‥◇‥‥+‥‥☆


   HAPPY BIRTHDAY

      慧


☆‥‥+‥‥◇‥‥+‥‥☆





―――――


やっぱり間に合わなかった…慧ゴメン…(現在0:30)
そしてまさかのアラ慧。やっちまった感満載でございます
アラタの口調が、口調が…!わからない…
何か色々ぐだぐだですみません…(汗)
因みに、ルビーは『健康・威厳』ラピスラズリは『成功』という意味があるらしいです。余り自信はないですが…。何か二人にピッタリだなー、と調べてから思ったり…(笑)


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