[携帯モード] [URL送信]
jealousy





「あ〜っ!瞬さん発見だピョ〜ンッ」

「うわっ、た…多智花!重い、降りろっ」

「………」


空き時間、清春と瞬が揃って学園内を歩いていると八雲が瞬を発見し、飛び付いて行くというのが此処最近良く見られる光景
それを見ては周りの人達はまたか、と言った表情を浮かべながらも特に気にしては居なかった

只一人を除いて


「……ツッマンネェ」


誰にも聞こえないよう、小さな声で吐き捨てれば瞬にちょっかいを出している八雲を横目で見ながらその場を後にした
学園内で一緒に居られる時間は限られているのに此処最近、何時も何時も八雲に邪魔されている為清春の怒りは徐々に溜まって来ていた
只喋っているだけじゃない、ベタベタと瞬に触っている事が何よりも気に入らない。瞬は瞬で何だかんだ言って八雲に甘い為完全に拒否する事もない


(チッ、気に入らネェ)


瞬にベタベタとくっつく八雲も、その八雲を拒否しない瞬も、そしてそれを見て苛立っている自分自身にも
その苛立ちが俗に言う『嫉妬』という感情であると気付いていたが、嫉妬している自分を認めたくなくて、ただただその気持ちを誤魔化すように学園中に悪戯を仕掛けていた


「あーあ、仙道せんせい機嫌悪そう」

「………清春は素直じゃないから…瞬も、だけど」


苛立ちながら学園中に悪戯を仕掛ける清春を少し離れた場所から那智と瑞希は見ていた。苛立っている清春に関われば火の粉が掛かるのは目に見えている為、接する事はせずに


「おれやせんせいみたいに素直になればいいのにねー、仙道せんせいも」

「……どういう意味?」

「あれ、せんせい気付いないの?」


那智の言う意味を理解出来ずに不思議そうに首を傾げれば肩に腕を回され、瑞希の耳元に顔を近付ければそっと囁く


「せんせいはおれが慧と一緒に居たら機嫌悪くなるでしょ?嫉妬してるのモロわかりだよ」

「……っ!」


自分でも気付いいない事を言われ、瑞希は一気に恥ずかしくなって頬を紅潮させた
自分は確かに嫉妬深い方だ。しかし無表情で居る事に慣れて居る筈、だからバレて居ないと思っていたのに。那智には全て知られていたようだ


「七瀬せんせいもおれみたいに仙道せんせいの嫉妬に気付けばいいのに…ねぇ?」

「…………」


顔の距離を近付けたまま、悪戯を仕掛けて回る清春を見ながら呟く那智の言葉を瑞希は聞いては居なかった。嫉妬に気付かれていた事が今は恥ずかしくて仕方ない。そんな瑞希に気付いて小さく笑い、身体を密着させながら改めて清春へと視線を向けた
苛立っている為に仕掛けている悪戯の数が半端ない。このままでは悪戯に引っ掛かる生徒が多数現れ、それを見た慧が激怒して後々面倒になり瑞希と過ごす時間が減ってしまう。そう考えれば小さく溜息をつきながらも清春に向けて声を掛けた


「仙道せんせい、いい加減にしてくださいよー」

「アァ?ウッセェ!オレ様が何しようがオレ様の勝手だろーガッ」


仕掛けの真っ最中に声を掛けられ、更に苛立ちを募らせながら顔を振り向かせる。那智の姿を捉えると同時に傍に居る瑞希に気付く


(アイツ等はどこでもベッタベタしやがって…ウゼェ)


本当は自分も瞬と一緒に居たいのに。八雲に邪魔され、瞬で遊ぶ事が出来ない状況であんな二人を見てしまい、苛立ちもあったがそれ以上にガラにも無く羨ましいなんて思ってしまった


「ねぇ、せんせい。七瀬せんせいが大事ならちゃんと掴まえとおかなきゃ。おれみたいに」


ね、と笑みを浮かべながら清春に一つ忠告すれば人が居ないのをいいことに先程から黙ったままの瑞希にそっと口付けた


「っ、な…何…!?」

「あははっ、虫避け…なんちゃって」


虫避け、と言いながら清春に視線を向ける那智に気付いた。その言葉は本来は清春に向けて言った言葉
視線が合えば那智の口端が吊り上がり、パクパクと口が動く


『変な意地張ってたらせんせい取られちゃうよ?』


そう唇が動くのを確認した。思わず舌打ちをするも確かにその通りかもしれない
那智に向けて一睨みしてから清春は先程瞬と八雲が居た場所へと早々に戻った


「…さて、と…どうなるかな」

「………清春のこと、気にしすぎ」


暫し押し黙っていた瑞希がゆっくりと口を開く。自分と一緒に居るのに清春の事ばかりを気にしていた那智が気に入らなかったのか、拗ねた表情を浮かべる


「あ、もしかしてまた嫉妬?」

「……………知らない」

「可愛いなぁ、せんせいは」


拗ねてしまった瑞希を宥めるようにしっかりと抱き締めながら顔中に口付けを降らしていく
そんな様子を学園内を見回っていた慧に見付かり、怒鳴られるのはまた別の話





――――――





「ねぇねぇ、瞬さん〜ぐしゃぐしゃ〜ってしてもいい〜?」

「っ、もうしてるだろーが!いい加減にしろっ」


先程の場所へと戻って来ればまだ八雲は瞬に飛び乗ったままだった。朱の髪に指を絡めて乱しながら遊んでいる八雲に眉間に深く皺を刻みながら近付き、無理矢理瞬から引き剥がした


「うわっ!?」

「オレ様のモンに勝手に触ってんじゃネェ」

「…仙道、助かっ……ッ」


漸く八雲から解放され、助けてくれるなんて珍しいと思いながらも礼を言おうとした瞬間、柔らかな感触が唇に触れて言葉を遮断される
その瞬間八雲が騒ぎ出して我に返った瞬は慌てて清春の肩を押し返して身体を離そうとするも、その前に清春にしっかりと抱き締められて身動きが取れなくなった


「うっわ〜っ!こんなとこで、何してるピョン!?」

「コイツはオレ様のモンだって見せ付けただけだけどォ?」


瞬が逃げ出してしまわないようにしっかりと抱き締めたまま睨むような視線を八雲へと向ける
嫉妬していたなんて認めるのは嫌だったが、それ以上に自分以外が瞬に触れている事が許せなかった


「だから、今後一切コイツに触るんじゃネェ」


何時になく真顔で言われ、清春から威圧感を感じれば驚いて何度も瞳を瞬きするも、清春が嫉妬していた事に気が付けば八雲は楽しそうに笑ってその場から離れる為背を向けた


「…ほうほう。嫉妬ですか…瞬さん愛されてますなぁ。僕あてられて、あっちあちなのです〜。ってわけで、お邪魔虫は退散するピョン〜」

「ケッ、言ってろ!」

「………嫉妬?」


立ち去る姿を視線で追いながら八雲が残していった言葉を復唱した


(仙道が、嫉妬した…多智花に…?)


まさか、有り得ない

そう思ったが、清春は嫉妬じゃないと訂正はしなかった。つまりは本当に嫉妬していたという事になる
余りにも意外過ぎる為に目を丸くさせながら清春の方を向けば何処かバツの悪そうな顔をしながらもう一度口付けた


「っ、仙道…」

「この、バカナァナ!オレ様意外に触られてんじゃネェ」


耳が痛くなる程の大声で叫ばれ、思わず表情を歪めたが清春が嫉妬してくれていたという事実を知れば直ぐに表情は和らいだ。そして頬に軽く唇を押し当てた


「悪かった、今度から気をつける」

「…絶対だからナァ?」


瞬からの口付けとその言葉に清春の苛立っていた心が漸く落ち着く
邪魔されてしまっていた時間を取り返すように二人は此処が何処であるかも忘れ、ゆっくりと唇を重ねた

先程学園内でイチャついていた那智と瑞希を説教する為引き連れながら学園内を歩いていた慧に見付かり、四人揃って説教を受けたのもまた別の話





―――――





フリリクで菊様からのリク、キヨナナの清春嫉妬話でした。こんな感じでよかったでしょうか?ちょっと那瑞が出ばってしまいすみませんでした;そして八雲の口調がわかりません…←
リクエストありがとうございました!


あきゅろす。
無料HPエムペ!