[携帯モード] [URL送信]
不可解な感情



「……瑞希、おい瑞希!」


撮影スタジオ。今日の仕事も瑞希と一緒だ。―――が、しかし


「Sit!全く、何処へ行った…」


相変わらず寝てばかりの瑞希はどうせまたスタジオ内の何処かで寝ている…そう思っていた。が、今回に限ってスタジオ内に居ない
永田に探させようともしたが、どうやら体調が優れ無いらしく傍には居ない
他のスタッフは勿論撮影の為手が離せない

自然と手が空いてくるのは翼、只一人
不本意ながらも仕方無く瑞希探しの役を担うハメになった

先程から飽き部屋や屋上等…行き来し姿を探すも一向に見付からず余り気の長く無い翼の苛立ちも募るばかり

室内に居る様子は無い、仕方無く足を伸ばしスタジオ裏にある芝生の方へと足を向けた。早く見付けてしまいたいという気持ちと中々見付からない苛立ちを抱えて


「……瑞希!いい加減に…、…?」


出て来い、と怒鳴りかけた最中、芝生を踏み散らすよう歩き回っていると漸く見えた一つの影に視線を向ける

白い塊が転がって…いや、人だという事は理解しているが

今日の瑞希の衣装は確か白。緑の芝生に映え、そして瑞希に良く似合う…白だ
そう、その白い塊は先程から探していた瑞希本人だ

漸く見付けた、とその一つの影にゆっくりと歩み寄れば無防備にも芝生に横になり寝顔を曝す瑞希の姿が翼の瞳に映る
警戒心も何も無い、子供の様な寝顔

不覚にも愛らしい、と思ってしまった

そんな瑞希の姿を見れば自然と怒りが消え失せ、起こさない様に隣にそっと腰掛けて寝顔を覗き込む
何度も寝顔を見て来たがこうやってじっくり見るのは初めてだ

薄く開いた唇
柔らかなブロンドの髪
予想よりも長い睫

自分より一つ年下の男、だ(学年は同じだが)
体格もそこそこいいし自分よりも背が高い(悔しいが)

なのに何故か目が離せない。魅入ってしまう


「………可愛い、な…Kiss…してやろうか」


何て、何を言っている

そう思った。思ったのに…考えるよりも先に身体が動いた

身体を屈め、眠る瑞希の唇に己の唇を近付け


二つの影が一つに重なる



…――ちゅ



小さなリップ音が耳を霞めた時、漸く自分が何をしたか、何を思ったか理解した

同性の、友人である瑞希にキスを――…した


「…ッ、俺は、何を…!」


慌てて身体を離し触れた唇を抑え自分の取った行動を思い返し、頬が一気に紅潮する

相手は男だ、男

自分と同じ

幾ら可愛いと思っても、唇が柔らかくても


「……っ!」


何て、可愛い?

俺は瑞希を『可愛い』と思って…?


「な、何を考えている、俺は!」


口にした言葉が信じられなくて口元を手で覆う
覆った唇にはまだ触れた瑞希の温もりが残っている
柔らかな感触も、鮮明に覚えて――…


「ッ…!」


何だかその場に居られなくて、気が付けばスタジオに向かって逃げる様に走り出していた。当初の目的を忘れて

こんな気持ちは、知らない

未だ、気付きたくは無い


「……………」


翼が立ち去った後、ゆっくりと起き上がる一つの影


「………今の、何…」


本当は、起きていた。翼が隣に座った時から。でも翼が一人で何か呟いていたから、起きるタイミングを見失って起きる事が出来なかった
そうしている間に触れた、熱い唇


「……ッ」


思い出しただけでも顔が、身体が熱くなる
何で、こんな事を……嬉しかった、何て思う自分が居る

戸惑いが隠せない


「……クケー?」

「トゲー、今…顔見ちゃダメ…」



今は未だ、この気持ちに名は付けられない


でも、名が付く日は直ぐそこまで来ている



――――――
Vitaminで初めて書いた小説がこれでした。初々しい二人が書きたかったんだけど…玉砕…orz







あきゅろす。
無料HPエムペ!