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A true feeling





最近気が付いた。俺が天を守りたいと思う気持ちに主従以外の感情がある事に


「いったぞ、成宮ー!」

「おう、任せろってんだ!」


放課後、何時もの如く天十郎は部活の助っ人として走り回っていた。今日はサッカー部の助っ人
グラウンドで駆け回る天十郎の姿をグラウンドの隅の方で千聖は見守っていた
そんな天十郎の姿を見ながら千聖は重く溜息をついた

一体何時から、天を…恋愛対象として見ていたのか

そんな事は覚えていない。天十郎はとにかく単純で阿呆で、成宮家の次期当主になるべき人間なのにその自覚が足りない
嫁探しに駆け回り、部活の助っ人として駆け回り、へこんで笑って怒って喜んで…表情が目まぐるしく変化する天十郎に何時しか目が離せなくなっていた

何れ仕える主人だから、だから目が離せないだけだ

最初はそう思っていた。そう思い込んでいた。しかしそんな気持ち以上に天十郎を大切に思っている自分を誤魔化し切れなくなった
天十郎の喜ぶ顔が見たいから料理の腕をもっと上げ、天十郎の支えになりたいから傍を離れずにいる

千聖の全ては愛しい存在の為に

しかしそんな感情は表には出せない。出してしまえばきっと今の関係は終わる。幼なじみで、親友で…そんな関係が全て
同性である天十郎にそんな事を知られてはいけない。天十郎は自分の運命の人を探す事に必死なのだから
知られてしまえば今の様には居られない。歯止めも効かなくなる


「…はぁ……」


グラウンドで駆け回る天十郎に再度視線を向けながら溜息を零す
どんなに恋い焦がれていても、この想いを告げる事はしてはならない

今の距離を壊したくない、でも今の距離を壊してしまいたい
自分の物にしたい、しかし拒否された時の事を考えてしまい、今一歩踏み出せない

そんな葛藤を抱えながら何度目かになる溜息を付き、ぼんやりと天十郎の姿を千聖はただただ見守っていた





―――――





「千〜…聞いてくれよぉ…」


部活の助っ人も終え暫く経った後、何時もの如く女子生徒にフラれ落ち込みながら天十郎が戻って来た
またか、と千聖は面倒そうに溜息を付きながらも時間も時間な為先ずは帰宅が優先だと思い、天十郎の腕を掴み校門で待っている車の元へと向かった


「ったく、毎回毎回…お前は本当に懲りないな」

「てやんでぃ!今回こそは本当に俺様の運命のオンナだと思ったんでぃっ!俺様のことカッコイイ、とか好きって言ってたのによぉ…」


車内で繰り返される会話。これも毎日毎日同じ内容のものだ。こんな会話を繰り返しながら千聖は何時も心に嫉妬心を芽生えさせる。今日の話を聞けば何時もよりも強い嫉妬心を

そんな女よりも、俺の方がお前を想っている

そう言い掛けて何度言葉を飲み込んだ事か。言えたらどんなに楽か…しかし、やはり怖くて一歩踏み出す事が出来ない

でも、そろそろ限界だ

車が成宮家に到着すれば運転手がドアを開き、天十郎と千聖は一緒に車を降りた。そしてそのまま二人揃って天十郎の部屋へと向かう


「あぁ…俺様のヨメ…」

「……嫁、嫁と…うるさい」


自室に戻るなりそう呟く天十郎に嫉妬心が更に強まり、千聖にもとうとう我慢の限界が来た。腕を伸ばして身体を引き寄せて後ろから天十郎を抱き締め、顎に軽く手を添えて顔を向かせれば千聖は自分の唇を押し当てた
余りの突然の行動に目を丸くさせ暫し硬直してしまうも、唇に当てられた唇の感触に何をされているか理解し、一気に顔を赤くさせながら千聖の身体を押し返す


「ッ、な…ななな、何しやがるっ!」

「……す、すまない」


天十郎の声を聞き漸く我に返った千聖は慌てて天十郎の身体を離して謝罪の言葉を口にする

やってしまった。抑えが効かなかった

後悔の意に駆られ、嫌われてしまう事を覚悟しながら天十郎の言葉を待つが只沈黙が訪れるだけで何も言われない
不思議に思い、千聖は恐る恐る天十郎へと視線を向ければ口元を手で抑えながら真っ赤になりながらうろたえている姿が視界に入った


「……天?」

「…んで、いきなり…キ、キスなんかっ…」


てっきり怒声を浴びせられるとばかり思っていたのに、それとは逆に赤くなったまま動揺する天十郎を見て拒否されていないと感じ取れば再度天十郎の身体を抱き締めた。拒否されてしまわないかと不安になりながらも
しかしそんな心配は無駄に終わり、天十郎は只大人しく千聖の腕の中に収まっていた


「嫌がらないんだな、天?」

「う、うっせぇ!大体、何で…いきなり、こんなっ…!」


何故?そんなのは決まっている


「天、お前が好きだからだ」


お前は、俺をどう思っている?

抑えていた言葉を口にした途端、赤くなっていた天十郎の顔が更に赤く染まり、告げられた言葉に信じられないといった表情で千聖を見つめていた


「俺様を、好き…?」

「ああ、好きだ。恋愛対象として、お前が」


男に、親友だと思っていた人に告白されたというのに嫌がるどころか赤くなり、心臓が煩く高鳴る

そんな自分の心境に驚きながらも天十郎はただただ千聖を見つめていた


「…お、れ…は……」

「何だ、天?」


何で、こんなに心臓が煩く高鳴るのかわからない。この気持ちは…?

困惑しつつも拒否する様子を見せない天十郎に内心安堵しながらそっと頬を撫で続く言葉を待った

きっと拒否はされない。長年付き合って来たから分かる
天十郎の姿を見ていれば、分かる

きっと、受け入れてくれる


「天、もう一度言う。俺はお前が…好きだ。お前はどうなんだ?」

「俺、は…俺様は……」


千が、好き

口で言う前に心がそう叫んだ。そんな事を思った自分自身に驚きが隠せず、更に困惑してしまう

(千を、好き…?)

好きなんて感情、何時からあった?そんなのは知らない。何時も傍に居てくれたから、気付かなかっただけかもしれない。それが千聖の言葉により自分も好きだという事に気付かせてくれた
好き、と一度気付いてしまえばその気持ちは止まらなくて、気付けば千聖の背に腕を回して身体を寄せていた


「天?」

「せ、ん…俺は……千、が…」


背に回された腕と、動揺しながらも途切れ途切れに何かを告げようとする天十郎に何を言いたいのか察すれば愛しさを覚え、自然と千聖の口元に笑みが浮かんだ

さぁ、早く言ってくれ。早く続く言葉が聞きたい。その口で、教えて欲しい


二人の関係が親友から恋人へと変化するまで、あと少し





―――――





3500キリ番を踏んで下さった椎名様のリクエストでした
リクエスト通りの作品になったか心配ですが…;こんな感じでよかったでしょうか?この後二人はくっつきます(笑)
椎名様、リクエストありがとうございました!


あきゅろす。
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