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召し上がれ





バンドの練習も終え、多少疲れた顔付きで自宅へ続く道を歩き、漸く見えた自宅前の扉の前に一つの影が見えた
その影が誰なのか何となく予測がつき、思わず溜息を付きながらも更に歩みを進める。瞬の姿に気付いたのか寄り掛かっていた扉から背を離し、軽く手を揺らすその影


「よォ、ナナ。遅かったじゃねーかァ?」

「…仙道、やはり貴様か」


歩みを進めた所で月明かりに照らされ清春の姿が視界に鮮明に映り、思わずもう一つ溜息をつきながらポケットから鍵を取り出して扉の鍵を開け、玄関へと入って行く
そんな瞬の後を追うように断りも無く瞬の家へと足を踏み入れた


「ナナ、オレ様腹減ったんだけどヨ、何か食わせてくんネェ?」

「………」


無断で部屋に入った途端清春のこの言葉。眉間に皺を寄せ睨みを一つ向けるも無言で瞬はキッチンへと向かう
清春は知っていた、嫌そうな顔をするも文句一つ言う事無く自分の為に料理を作ってくれる事を。料理だけでは無く、多少の我が儘も文句を言いながらも大抵の事はしてくれる

そんな瞬の姿勢が愛しくて仕方ない

キッチンへ向かった瞬の姿を追っって行けば制服姿のまま黒いエプロンを付けて材料を切っている姿が視界に入る。トントンとリズム良く聞こえる材料を切る音を聞きながらそっと歩み寄り、腰に腕を回し抱き寄せながら背後から顔を覗かせて材料を確認しつつ瞬の方を見遣れば清春の行動に驚き、瞬はビクリと肩を跳ねさせて包丁を持つ手が一旦止まる


「なっ、仙道!包丁を使っている時に危ないだろう、離れていろ!」

「んなコト気にすンなよ。それよりナ〜ナチャ〜ン?今日は何作ってくれんダァ?」

「…炒飯だ。今月は少し厳しいからな、これで我慢しろ」


悪びれも無く笑みを浮かべたまま問い掛けてくる清春にそれ以上は何も言わずに簡潔に作っている料理名を答え、清春の好きにさせながら注意を払って材料を切る。拒否の意を見せない瞬に満足そうに笑いながらサラリと長い髪を避けて首筋を曝させ、ちゅ、と軽く口付ける


「…ッ、仙道…危ないからやめろ」


口付けを送られればピクリと小さく身体が揺れ、微かに赤くなりながらも咎める様腰に回されたままの手を軽く叩いた


「キシシッ、ナナが気をつけてればイイだけダロォ?」

「それは、そうだが…」


首筋に感じた甘い感覚を思い出して微かに身体が熱くなる。それを振り払う様に首を左右に振り気持ちを切り替えてから切り終えた材料を纏めてフライパンを準備する
それを見て流石に邪魔になるかと思い、腰に回していた腕を解いて瞬を解放する。そしてそのまま傍から離れ、キッチンの隅へと移動した


「ま、オレ様は優しいからナ、メシ作ってる間は離れててやるよ。でも、あんまオレ様を待たせんなよ?」

「…分かっている、直ぐに作るからもう少し待っていろ」


清春の小さな気遣いに気付き、口元に笑みを浮かべながら答えれば調理に集中し、手慣れた手つきで作っていけば出来上がった炒飯を二人分皿に盛り付け、二つの皿を持ちながら清春の方へ身体を向けた
持った皿の一つを清春へと差し出せばそれを受け取り、二人揃ってリビングへと移動する


「あ〜腹減った、ンじゃ食うか」

持った皿から漂う炒飯の匂いに食欲をそそられ、瞬の手作りというだけで自然と気分が上昇する。何度も食べている手料理だが、こうやって作って貰えるのはやはり嬉しいものだ


「ちゃんと味わって食え、じゃないと殺す」


貴重な食材を分けてやっているんだから、とブツブツと瞬の小言を聞き流しながらスプーンを片手に冷ましながらガツガツと勢い良く食べ始める。相当腹を空かしていた為事に加え美味しい料理に味わいたい気持ちと腹を満たしたい気持ちが混ざってしまい、そのお陰で食べる勢いが止まらない
清春は無言で手を止める事無くひたすら食べ続けた


「……おい」


折角作った料理を味わう事無く食べていると勘違いすれば微かに怒りを覚えれば食べる手を止め、バンッと音を立ててテーブルを叩いた


「仙道!貴様…味わって食えと言っただろう!殺されたいのかっ」

「ウッセ、腹減ってんダヨ。それに、おまえが作ったモンだからウマいしナァ、食う手が止まンネェ…悪いカ?」


瞬の怒りで漸く食べる手を止め、悪びれも無く笑みを浮かべながら清春にそう言われてしまえば、その言葉に不覚にも照れてしまい、思わず清春から顔を背けた


「そ、そういうことなら…。……足りないなら、俺の分をやってもいいが…」


口では素直に言えないが「ウマイ」の言葉に内心喜び、微かに赤くなりながらも食べかけの皿を清春の前へと差し出した。が、清春はそれを受け取らずに首を横に振り、皿を持つ瞬の腕を掴みながら顔を近付けて耳元へ唇を寄せる


「メシもイイけどヨォ…オレ様はさ、ナナ…デザートで腹を満たしたいンだよ。お前っていうデザートでナァ?」

「なっ…!?ッ…」


耳元でワザと低く囁かれ、低音に思わずゾクリと背筋が震えた。そしてその言葉と耳に送られた口付けに一気に身体が熱くなる。暫し戸惑っていたが、瞬は赤くなったまま清春の服を掴み顔を近付ければ自分から唇を重ねる


「っ、ナナ…?」

「…いいだろう、食わせてやる。但し、全部綺麗においしく食え。絶対に残すな…わかったな!?」


瞬からの口付けに驚き、更に続く言葉の意外さに瞳を瞬かせるも直ぐに口元を歪ませ笑みを浮かべれば勿論、と言わんばかりの表情を浮かべ次は清春から口付けを送った


「当たり前だ、こーんなウマそうなデザート、誰が残すかヨ」


幾ら食ったって足りネェ

未だ手に持ったままの皿をテーブルの上へと戻し、瞬の手の中の皿も置けばそのままゆっくりと瞬の身体をソファへと押し倒す


「そンじゃ、いただきマス」

「ふ…、召し上がれ…」


互いに視線を合わせ笑みを交わせば、ゆっくりと唇を重ねて身体をソファへと沈めていった





―――――





5/27〜6/7に行ったアンケート第三位の清春×瞬でした。甘い二人を目指して書いてみたんですが…中途半端ですみません;;
アンケートに投票してくださりありがとうございました!


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