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木曜日
木曜日




泣くのは昨日さんざん泣いた。大丈夫、あたしは強いよ

『名前は弱いから』

ズキズキと痛む頭。その全てが裕太との思い出を拒否してるみたいで、あたしはさらに悲しくなった。うるさいな、誰のせいでこうなったと思うんだ馬鹿。のらりくらりと歩いていたら、やけに今日はカップルが目につく。どうしてこの学校はこんなにもカップルが多いんだ。走馬灯のように流れていく裕太との思い出にジワリと視界が滲んだ。どうして、こんなにも涙もろくなった?

(…そう言えばあたし)

裕太にまだなにも気持ち伝えてないじゃないか。そりゃこんなにも未練がましくなるじゃない!二階堂に協力をしてもらいあたしは全てを終わらせる覚悟で、裕太の待つ屋上に足を向けた。結果、あたしの気持ちが裕太に届かなくたって良いよ。気持ちを伝えることが大切なんだから。それを二階堂は教えてくれたから


「…やっぱ名前だ」
「ゆ、うた」
「二階堂が呼び出しなんかする勇気ないからね」

「あ、のさ」


でももし伝えたらどうなってしまう?今までの思い出も否定されてしまうんじゃないのか、

『ほら手かしなよ、寒いでしょ』
『裕太が寒いだけじゃないの?』
『…』

暖かい思い出すら何もかも裕太は否定してしまうんじゃないか、そう考えたら気持ちなんかとてもじゃないけど言い出せなくなってしまった。神様、神様神様神様神様!


「…用、ないなら行くから」
「、ゆう」

「もし、」


遮られて聞こえてきた言葉に、あたしは耳を傾けた。もしまた『ごめん』と言ったあかつきには思いっきりしばいてやる。ごめん、なんか1回で良い、本当は1回も言ってほしくない。裕太は知らない、『ごめん』と言われるのがどんなに残酷かを何も知らない。


「もし名前が俺を好きって」
「っ、」
「ちょっとでも思っててくれるなら」
「ゆ、た」
「裏切らないから、待ってて」


バタンと閉まった扉をあたしはただ見つめるだけしか出来なかった。

『裏切らないから、待ってて』?それは、戻ってきてくれるってことなの?

裕太の全部をもう1回独り占めできると信じていいの?


「…っ裕太」




全てが恋しい木曜日


 



あきゅろす。
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