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水曜日
水曜日


『名前、』

なんて優しく名前を呼ばれた気がして目が覚めた。どうやらまだ授業中らしく、さっきから世界史の先生の声がうるさく耳に響く。さっきの時間思いっきり二階堂の胸で泣いたせいか、あたしの瞼は重い。あーあ、腫れが引くまでどのくらいかかるのかな。兎にも角にも、腫れが引くまでは絶対に顔を上げられない。だって、こんな顔裕太には絶対見せられないじゃないか。…なに考えてるんだ、あたし。昨日裕太から『一緒に帰ろう』とは言われなかった、それが答えじゃないか。一週間経って黒くなった髪も、昔の裕太じゃない黒さだ

頭髪料でやったのなんか自然じゃないし、1発で分かるわおたんこなす!…でも、もしいま裕太に謝られたらあたしはどうするんだろう。『昨日ごめん。今日は帰ろう』だなんて言われたら、あたしはまだ彼女だという自覚をもって良いのかな。あいにく、裕太からそんなこと言われなかったしメールすら来ていない。期待するだけ無駄、分かってる。でも、あたしはただ1%でも希望があるならば未練がましくても、その1%に賭けてみようと思った。1年もそばにいてくれたんだから、もしかしたらふと思い出すかも知れないじゃないか。最も、裕太はそんなキャラじゃないけれども

どうしようか、ブルブル震えた携帯にピクンと身体を揺らせば、後ろから椅子を蹴られてしまった。後ろの席はドS二階堂だ!あ、うそごめんなさい。二階堂って実はMなんじゃないかって近頃思うんだけど、気のせいかな。本当にたまにだけど。苦情なら口で言えってんだ学校の備品を乱暴に扱うんじゃない

コソッと携帯を開いて画面を見ると、新着メール1件の文字。もしかしたら、なんて考えていそいそとメールを開いたあたしは馬鹿で滑稽すぎた。確かにメールは裕太からだった、だけどだけどあたしはそんなメール望んでたんじゃないよ


『ごめん』



もしもに夢見る水曜日

身体すべてから力が抜けていった







あきゅろす。
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