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あの夏、



それはそれで、面白かったり


「じゃ藤ヶ谷くんは芸人になるんだ」
「分かんないけど、出来たら、ね」
「へ─、北山くんはサッカー選手でしょ?みんな夢持ってるね」


たぶん、あたしとアイツの関係なんてこの先生きていく中では少ししか関わりがなく、そんな大した思い出じゃない。だけど、今でも謎だ。なぜ彼は、あたしを、あたしなんかと


「あ、横尾は?横尾は何なんの?」


ドキンと心臓が跳ねたのは気のせいではない。決して交わらない視線。一瞬だけ目を細めたあと彼は、めんどくさそうに外を見た

あの目で、あの体で、あの指で

まだ暑かったあの日の出来事を覚えているのは、きっとあたしだけ。横尾くんの中では何でもなかった事になり、あたしはただの顔見知りになるだけ


「俺は、調理師かな」
「あ─、横尾料理上手いもんな。名前は?」

「あ…、まだ決めてない、かな」


どうでも良さそうに外を見て、ズッと音を立てながらジュースを飲む彼に思わず釘付けになってしまった。


「…なに?」


あたしの視線に気付いたのか少しニヤつきながら、こちらを見返してそれはあの日の横尾くんにほど良く似ていて、思わず胸が痛くなった。あたしは、横尾くん…横尾を、


「別に、」


うずうずする体を抑えて席を立った。ダメだ、あたしは何をしててもあの日の横尾が頭の中に出てきて、

あの日限りだと、そう思っていたのに



あの夏、
あたしは横尾と体を重ねたんだ






あきゅろす。
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