掴まれた手首が白くなり、強い痛みを訴える。
しかし殺気を放って睨んでくる男から目を逸らせない。
逸らしたが最後、シキの命は儚く散ることになるだろう。
「お前、誰ね。ワタシの質問に答えろ」
よくもまあ、高熱とあれだけの重傷で殺気を放てるものだ。
内心でそう感心しながら、「私の名前はシキ」と口を開く。
「森で倒れていたあなたを拾ったの。あなたは二日、眠り続けていた。クロロには連絡してあるわ」
「……団長の知り合いか」
「ええ。クロロ・ルシルフルとは知り合い。そのクロロからの伝言だけど──『一週間、シキの世話になれ。これは団長命令だ』、だって」
だから私を殺そうとしたりしないでね、ついでに手首も離してもらえる? と首を傾げる。
実はかなりヒヤヒヤしていたのだが、男は警戒しながらも手を離した。
赤くなった手首を撫でる。
「それじゃあ、起きたことだし。雑炊でも作ってくるから、その間にこの服でも着ていてくれる?」
そう言って、畳まれた黒いパジャマを手渡す。
男は小柄なのでサイズが合わず大きすぎるだろうが、生憎と男物はそれしかない。
そこで自分が服を着ていないことにようやく気付き、男は呟いた。
「お前が脱がせたのか」
「うん。悪いと思ったけど、ボロボロだったから……」
シキは申し訳なさそうな顔でごめんと謝った。
そして病人食を作るために部屋を出ていく。
残されたフェイタンは
「……団長の女か」
明らかにクロロ好みのパジャマに、ぽつりと呟いた。
20080714 |