見つめているだけで
あんたを見つめるだけで。
おれは幸せなんだ。
見つめているだけで
ゆらゆらと揺れる波。揺れる船。揺れる部屋…。
ここは、世界一最強と謳われる白ひげ海賊団の船。モビーディック号だ。
そしておれがいるこの部屋は、船長白ひげことエドワード・ニューゲートの右腕である不死鳥マルコの部屋。
おれが此処に居る事なんて、日常茶飯事で、当たり前のこと。
それが好意によるものなんて。多分、ちらほら気付かれているだろう。
マルコの耳にも入っているかもしれないが、マルコはいつもおれを部屋へ入れてくれる。
こんなことを始めたのはおれがここに入ったばかりのときだ。親父を何度も襲ったおれをマルコは優しく接してくれた。
最初は意味が分からなかった。
それなのに、それがどんどん好意に変わっていったんだ。
例えそれが叶わなくとも、おれはマルコを好きでいる。
「なぁ、エース」
「何?」
「すまねぇが、ちと書類を書かねえと行けねぇから外にいっててくれないかい?」
こういう事も有るわけですよ。これも日常茶飯事。
いつも一緒に居れる訳でも無いんだ。
そういう時は仕方なく承諾する。…時もある。
大したことじゃないときはじっとマルコを見ているんだ。
さすがに大事だと空気みたいに居なくなるけど。
今回はどうも後者らしいので、仕方なく退散する。
もっとマルコと一緒に居たいけど。
ここは我慢だ。
おれはマルコの部屋を去っていった。
「よぉ、エース」
「サッチ…!?」
「どうしたんだよ、浮かない顔して」
話し掛けたのは、サッチだった。サッチとは仲がよく、よく話すもんだ。
「いや、マルコと居れないなーって」
「ははっそんな年中お前といりゃ、マルコも疲れるだろーに」
「な…っ!!…………っ!!」
確かに、マルコは最近疲れ気味だ。でめその原因がおれとは限らないし…!!
自信なくすなぁ、サッチにそう言われると。おれといるとき、マルコは、ため息をよく吐くんだ。
「なーんてな、んな顔すんなよ!!」
「……。…そうだな」
「今ので自信なくしたのかよ!?」
「んなわけねーし!!」
まぁ、実際なくしたけどな。
―――――あ、
マルコだ。
あの後サッチと別れたおれは甲板の端っこに座っていた。他のクルーも居たから、誰も不思議がられない。一人だったらさすがに端っこに座んのは、いやだし。
そんなことはどうでもよくて、マルコ、書類があったんじゃ…?
不思議に思ってバレないように、そっとマルコの行動を探る。
ストーカーみてぇ……。
マルコはどうやら親父に用があったらしく、親父と話している。
こんな光景も日常茶飯事。
マルコは親父の右腕だから、楽しそうに話すのは当たり前だ。
でも何だろうな。
チクチクすんな。
『親父と話す時のマルコ、楽しそうだよな。』
ふ、とサッチが言ったことを思い出す。
確かに、マルコは親父と話すとき目がキラキラしている。
――マルコは、親父が好きなんだろうな。
悔しいはずなのに。
(輝いている君を見つめる)
見つめているだけで
(例えぼくを見なくとも)
END
お題サイト言ノ葉遊戯様よりお借りしましたしました。
無料HPエムペ!