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IANERUSAWOTAGIRA
現パロ
マルコが若年性アルツハイマー---------------------------



いつからか、物事をぽんぽんと忘れるようになってしまった。過去の記憶。幼い頃の記憶なんてもう残っていない。
忘れたくもないのに頭の中に思い出を食っちまう虫が住み着いてるみたいに、どんどん楽しかった思い出も全て全部。無くなっていった。

このまま、記憶のない人間になってしまうのか。絶対に忘れたくない存在の人と過ごした時間さえも無情にも虫は食べてしまうのか。

あいつのことだけは、絶対に忘れたくない。









「マルコー?差し入れ持ってきた」

「あ、…エースか。」


オレの大切な存在、昔なにかを教える職についてたときの教え子のエース。

なんの職についていたなんてもう忘れている。そのときの記憶さえも。
ただ、エースと一緒にいたというのは、所々残っていた。
顔を認識出きるくらいに。



エースは何故かずっと一緒だ。今でも。

こんな使い物にならないような頭を回転させて、推測するとエースはオレにとって大切なひとなんだ。
だから、忘れたくない。

絶対に。




「マルコ?今日何の日かわかる?」

「さぁ。なんかあったっけ?」

「うん」

「…覚えてねぇ。あ、元旦?」

「……………そっか」




――――?


オレが忘れるパターンは多いんだろう。
うっすらだが、こんな会話を何回かした。実際は毎日かも知れない。
いつもはエースは優しく受け止めてくれる。だけど今日はひどく悲しい顔をした。


大切な人を悲しませない自信があったオレにも悲しかった。
いや、仕方ないのかもしれない。オレがこんな病に侵されていなかったら。悲しい顔をさせなかった。

オレよりもエースの方が。何百倍も悲しいはずなのに。
オレは甘ったれたことしか考えられなくなったのか?


エースが「もう帰るね」と言った時にはもう空が闇に変わっていた。

こんな時間まで一緒にいてくれる。エースにとってオレなんて要らない存在だろうなんて言った事があった。そんときは思いっ切り殴られたっけ。
こんな記憶しか覚えてねぇ。
エースを悲しませた記憶。

まあ、とりあえずエースはこんなオレの側にいつも何時でも居てくれた。
だから。忘れたくないんだ。


エースを見送った後今日は何故か眠れなかった。
眠ったら、何故か今日の記憶とエースの記憶を失いそうで。



知らぬ間に、眠りに落ちていた。













だめだった。
やっぱりマルコは覚えてなかった。今日はほんとはおれの誕生日だった。

元旦ってことはわかるんだけどな。
別にマルコを責めるつもりなんてない。
マルコだって自分の誕生日を覚えてないんだ。
こんな考えをもったおれが甘いんだ。

マルコはもうおれなんて世話のいい人にしか見えてないかもしれない。けど。
おれはマルコのことを好きだから。毎日一緒にいるんだ。
例え、おれがマルコの記憶から消えたとしても。







今日もマルコの家に遊びに来た。昨日はおもいっくそ悲しい顔をしてしまったから、今日は笑おう。そう決めた。


「マールコー。遊びに来たよ」




マルコはいる筈なのに、いつまで経っても、マルコが来ない。まさかと思ったおれは忙しいでマルコがいるであろうリビングに駆け寄る。



「っマルコ!!?」


マルコはダイニングテーブルのところに座っていた。
こちらを背にしているから顔を伺えない。


「マル…コ?」



情けない声音でマルコを呼んだらマルコがこちらに顔を向けた。
必要以上にこちらの顔をみてくる。
マルコはいつもこんなことしないのに。



「マルコ…?」









「…どちら様、ですか?」





「…っ!!?」





いつか、こんな日が来るとは思っていた。覚悟を決めていた。例え、マルコがおれを忘れてしまっても、平気な顔でいようって。

でも、現実は。





「…っ!!」


「あ、ちょっと」




マルコの家から飛び出した。

止めようとしても。いくら拭っても次から次へと涙が溢れてきた。
こんなつもりじゃないのに。涙は止まらない。

マルコは絶対おれのことを忘れてしまう。それが今日か明日か。いつも不安だった。

でも、いざって言うときは絶対大丈夫って。なんでだろう。

泣かないって決めたのに。



「おれの、馬鹿野郎…!!」




涙を止めることは、出来なかった。















「…。誰だったんだ…?」


さっきの青年は。


なんだか頭が痛い。
大事なことを忘れているような…。


ふ、と目をテーブルの上のものに向ける。

さっきまで、オレは座って何を思っていたのだろう。

この、一つのケーキを眺めていた。


きれいにデコレーションされたケーキ。
クリームの中にプレートが一枚。
チョコのペンで描かれている"Happy Birthday to ACE"


――エース…?


エース…。聞いたことのある響き。
誰だっけ。

妙に引っ掛かった。忘れているような事は、これかもしれない。


誰だ…?誰だなんだ…?引っ掛かる。出そうで出ない。



エース…。




エース…!?



なんでオレは大切なひとを忘れてしまったんだろう。
忘れないと誓ったエースを忘れてしまったんだろう。


このケーキから大体予想はつく。多分、エースの誕生日だ。


でも、遅れてごめん。なんて書いてあるから、昨日…?




昨日、なんでエースは悲しい顔を…、したんだっけ?








「………!?っエース!!」



当てもないのに走り出していた。








あきゅろす。
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