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Novel
名前

運命とは

余りにも突然。

1人の人間に出逢っただけなのに、まるで全身を電気が駆け抜けたような

そんな感覚に陥る。

出逢ってちょうど2週間。

「こんにちは。」

私は今日も『強欲』(ココ)に立ち寄る。

唯一、彼に会える場所。

「…ん。」

ペコリと軽く会釈される。

彼は人見知りらしくあまり言葉を発しない。

“無口でクール”と言ってしまえば、それはそれでまたひとつの魅力なのかもしれない。

「…お茶。」

座って直ぐに、コト、と目の前にお茶が置かれる。

爽やかな香りが鼻をくすぐる。

「…良い香り…。やっぱりリンさんの淹れる中国茶は色が本当に綺麗…。」

リン・ヤオ。

私はリンさんと呼んでる。

彼は中国人で、色々あって日本にやってきた。

「ねぇリンさん。私ね、最近リンさんが好きそうな中華料理店を見つけたの。」

目の前に座る彼を見つめながら

彼が淹れてくれた美味しい中国茶を飲み

大好きな彼と他愛のない会話をする。

この時間が今は一番幸せだと感じる。



「…それでね、陽ってば鍋はキムチだ!って言い張って聞かないの。ねぇ、リンさんは鍋するならどんな味が好き?」

「…オレは…あっさり系が…好き。」

「そっかー。…わ、…」

私はね、と言いかけ

言葉を止める。

ほら

今だよリンさん。

…だけど

「…私、はね…」

彼の唇は真一文字に結ばれてて

「…私、は…」

何で

「…リン、さん…」

何で

「…どうして…」

私は

「…名前、呼んで…くれないの…?……もう…2週間も…経ってる…なのに…リンさんは…私の名前…一度も…呼んでくれてない…。」

悲しくて

何だか悔しくて

さっきまでの幸せな気持ちが何処かに消えていく。

「…『霞月は?』…って…ただ…一言…」

泣きそうな気持ちをグッ、と抑え

私は席を立つ。

このまま此処に居たら

私はきっと…わがまま言って…リンさんを困らせてしまう。

「…私、帰るね。…お茶、ありがとう…。お邪魔、しました…。」

なるべく顔を見せないように

玄関に向かう。

「ぁ、ッ…」

玄関を出る時に

リンさんが何かを言いかけた。

その言葉は私の耳に届く事はなかった。

玄関を出ると、ちょうどドルチェットくんに会った。

買い出しに行ってたのか、両手には沢山の荷物。

「お!霞月さんじゃん!来てたんだ?」

満面の笑みを向けるドルチェットくん。

「今日もリンに会いに来たんだろ?もっとゆっくりしてけばいいのに。」

「…そう、だね…。でも…きっとリンさんは…私が鬱陶しいんだよ…」

「鬱陶しい?何で?」

「…だって…私の事…聞いてくれない…興味、無いみたいで…」

「え?うっそだー。絶対そんな事ないよ。…だって…ほら…」

バタバタと玄関までの廊下を走る足音

それがおさまったと同時に
ドアが勢いよく開かれた。

「…え…?リンさ…」

「カ、ヅキ…!」

…あ、れ…?

今…

今…!

「おお!リン、上手く言えたじゃん!霞月さんの名前!」

「…え…?え?ど、どういう、事?」

「ほら、リンって中国人じゃん?だから日本人の名前上手く言えないんだよ。日本語はまぁまぁ上手くなってきたけど…確か…イントネーション?ってやつ?難しいんだって。発音が。」

「…そ、そうだったの…?」

「だから霞月さんが来る前と後、名前呼ぶの練習してたんだよ。俺それに付き合わされて寝不足」
「ドルチェット…//」

少し慌てたようにリンさんがドルチェットくんの口元を手で覆う。

その顔は照れたように見えて

「…知らなかった…。私…リンさんに鬱陶しがられてたのかと…」

「ち、違う…鬱陶しく、ない…オレは…嬉しい…カヅ、キが…来てくれて…//」

2回。

「…本当?」

彼はコクリと頷く。

「…じゃあ…これからもリンさんに…会いに行ってもいい?」

「…カ、ヅキなら…いつでも…歓迎する…//」

3回。

「…ねぇ、リンさんは…鍋するならどんな味が好き?」

「…あっさり、系…。…カヅキ、は…?//」


4回呼ばれた私の名前は


微妙にイントネーションが違う

不器用な呼び方で

決して格好いいものではなくて

「私もあっさり系!」

でも

今までの誰に呼ばれる名前よりも

優しくて温かくて

愛のある

そんな響きだった。

リンさんにはこれからもっともっと

私の名前を呼んで貰おう。





【みぃかの反省部屋】

はい、という事で…やっと完成した記念すべき一冊(?)目の小説。
これは愛する(←)霞月さんのリクエスト作品で、うちのコミュメン、リンとのラブラブ小説…の筈だったのですが…全然ラブラブじゃない…!むしろ何かちょっとシリアス入っちゃってるし…!出逢い始めのリンと霞月さんを設定に書いたらこんなんに…!すみません霞月さん…もっと頑張りますのでこれに懲りずまたリク下s(ry←
発音シクッて霞月さんに嫌な想いをさせたくなくて、名前を一言呼ぶのに頑張って練習してるリン…リンは本当に霞月さんを大事に想ってる、という事が伝わっていれば幸いです!

【次へ#】

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