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小ネタ(南北朝)
嘘(尊氏&師直&道誉)※シリアス
師直は常に穏やかな笑顔だ。

***

師直が怒った顔を誰も見た事がないらしい。言われてみれば、師直は常日頃穏やかな笑顔を湛えており、感情を表には出さない。
怒った顔が見てみたいと色々仕掛けてみるが、全て見透かされてしまい失敗に終わる。
(可愛らしい仕掛けをなさいますね、と言われた時は何とも言えなくなった)

けれど、師直から「笑顔」が消えるのはとても簡単な事だった。

「あまり佐々木様に肩入れなさらない方が宜しいですよ」

俺が佐々木と親しくなったある日、師直は「笑顔」で言った。

「何でだ?」
「婆裟羅とは傍若無人と呼べるもの。私も婆裟羅は嫌いではありません。しかし、佐々木様とこれ以上親しくなられるのは感心致しません」
「主君の交友に口を挟むのか?」
「そんな気はありません。しかし佐々木様は危険でもあるのです」

その時は適当に流したが、後日俺の屋敷に佐々木が突然来訪し、私用で出ていた俺は急いで帰った。そして門の前で見たのだ。

笑顔のない師直を。

「我が主にどのような腹積もりで近付いたのですか?」
「嫌だなぁ、執事さん。俺は近江源氏として仲を深めたいだけなんだって」
「文通でも構いませんよね?」
「それじゃあ人となりが分からないじゃないか」
「本音を申したら如何ですか?」

辺りの気温が下がったような感覚に俺はブルリと震えた。

「面白そうだったんだよ。北条の犬に成り下がったにしては、目の奥に野心?そう言うのが見えるなんて矛盾していてさ。久しぶりに楽しめそうだと思っただけだよ」
「…道化師が」
「薄っぺらい笑顔の執事さんには言われたくないね」

二人の会話は切れ切れにしか聞こえなかったが、佐々木が俺に近付いた理由が師直の逆鱗に触れたらしい。
このままでは不味いと思い、俺は自然に見えるように二人の前に行った。

「佐々木、お前が来るって聞いて驚いたよ」
「あ、高やん?ごめん急いでくれたの?」
「あぁ、客人を待たせるのはいけないからな」
「真面目だねぇ」
「お帰りなさいませ、高氏様」

険悪な雰囲気は一気に霧散し、何時もの笑みで俺を迎える二人に内心で安堵する。

「中で話をしよう。師直、茶菓子は?」
「饅頭がございますよ」
「それとお茶を持って俺の部屋に来てくれ。佐々木と都の話をしたいんだ」
「かしこまりました」

そう言えば部屋が少し散らかっていたなと思い、俺は先に歩いて部屋に向かった。





「嘘が下手だなぁ、高やんは」
「全くです」

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