小ネタ(雑多)
異議ある出会い(貞盛&将門)
「…くそっ!」
その日の小次郎は不機嫌だった。
荒々しく得物を置くと、そのまま何処かに行ってしまった。僕は慌てて後を追う。
「待って、小次郎」
「一人にしてほしいんだがな」
「ご、ごめん…」
「…いや、お前に当たるのは駄目だな。悪かった」
「何があったの?」
「…あのオッサン!!」
どうやら怒りが込み上げてきたのか、小次郎は一気に捲し立てる。
「いきなり出てきて、散々喧嘩売って挙げ句に俺の獲物を横取りしやがった!くそっ」
「だから機嫌悪いんだね…」
「…次は必ず勝つ。このまま負けっぱなしなんて家の恥だ」
それから小次郎は殆んど毎日のようにその人物と勝負し、負けていた。
負けた日は盛大に愚痴を吐かれ、僕は困ったように笑みを浮かべるしかなかった。
しかし小次郎がその人物の名前を言った時は流石に言葉を失った。
「俵藤太だ。まさか今まで喧嘩売ってた相手がえらい大物だったとはな」
「…小次郎、名前もロクに聞きもしないで勝負してたの?」
「張り合える相手なら関係ないからな」
「小次郎らしいね…」
僕は想像しなかった。
いや、出来るわけない。
もし出来たなら、僕はここからやり直したいくらいだ。
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