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小ネタ(源平)
教育論(義朝&清盛)※シリアス
※忠盛パパの教育で平家優先の取捨選択になった清盛の話。
パパがおっかない人過ぎる…



俺は親父と弟を斬った。
以前弟を(息子に命じて)手にかけた俺にとって、その延長でしかないと思っていたが…

(駄目だな…まだ手が震えてる)

やはり自ら、というのは気分が悪すぎる。
死刑を下した信西に、内心悪態をついた。

(…あいつは)

清盛はどうなのだろう?
叔父とは言え、あの清盛が斬れるのか。

(いや、あいつなら斬るな)

以前から叔父とは不和だと聞いていた。これ幸いと斬り捨てているかも知れない。
平家の害となるなら、あいつは平気で潰すのだ。昨日まで笑っていた友だろうと…

「あ、義朝」

声を掛けられ、俺は顔を上げた。
そこには普段と変わらない清盛がいた。

「清盛…」
「何だか顔色悪いね?」
「…煩い」

やはり顔に出ていたか。
こいつに感付かれるというのも癪だが、事実なのだ。

「人が心配してるってのに…」
「フン…」
「…強いんだね、義朝は」

小さく吐かれた言葉を拾っていれば、変われたのだろうか。
そんな事、当の俺は知る由も気付く由もなかった。

「…大丈夫なのか?」
「何が?」
「斬ったんだろう?叔父を」
「それが平家の為なんだもの」

何時もの決まり文句を言った清盛に、俺は無性に腹が立った。
そして、気が付いたら俺は清盛を殴っていた。



「…あ」

俺は、何をした?
震える拳と清盛を交互に見やる。清盛は真っ直ぐと俺を見ていた。

「義朝…?」
「す、まない…」
「…」
「清盛?」

清盛が見ている。
透き通っているのに暗い瞳。

あの瞳を俺は知っている。
そう、あれは…あの日、

『あそこまで叩きのめすか?』
『だって、私の弟を馬鹿にしたんだよ?足りないくらいだよ』
『だからって骨を折るのは…』
『潰さなきゃいけないんだ』
『…え?』
『平家の敵は、潰さなきゃいけないんだ』
『清盛…』
『父上は、そう言ったんだ』

平家を侮辱、又は裏切れば叩き潰せという父親の教育。
親父すら嫌悪する清盛の悪癖と呼べるそれは、日に日に異常さを増していた。
昇殿を許された者が生き残るために生み出した処世術。だがそれでは…

(こいつの心は、死んでしまう)

ガキの頃からの付き合いだから分かる。こいつが優しいのは。
非情に隠した本音は甘いのだと。

「無理をするな」
「…?」
「甘ったるいくせに」
「何を、言って…」
「俺はお前の味方だ」

暗い瞳はゆっくり光を取り戻す。
そして、泣き出しそうな顔で笑うのだ。

***

(あの時、俺は味方だった…)

なのに、俺はアイツを最悪な形で裏切った。

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あきゅろす。
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