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構ってほしい5題
あー転んだあああっ!(獅子)





私の愛してやまない彼氏は、たった“好き”の二音を口にするのも、憚られてしまう関係です。

毎日学校で会ってるけど、会えない時間は辛い。
分かっているけど、傍にいたい欲求は高まるばかり。
それ程までに―――、


「大好きです、陽日先生…」
「名前ちゃん!声、声に出てるっ」


おっと、私としたことが。
なんてったって教師と生徒の秘密な恋愛(月子ちゃんと星月先生にはバレた)だもんね。

でも、それだと不安になるわけです。
だからちょっとだけ行動に出るね。月子ちゃんごめん!


心の中で謝って、陽日先生が来るのを待った。

教室の入り口ではいつもの五人組が待機。
お弁当のおかずを賭けたバトルに、今か今かと先生が来るのを待ちわびている。

少し開いた扉。に挟まれている黒板消し。しかしそれはフェイクで足下には糸!
よく考えられているなぁ…。でも今日は私がぶち壊しちゃいます。
再び心の中で、ごめんちゃい×5。と五人分謝ると戦闘態勢に入った。


…足音が聞こえる。小さな鼻歌と共に。
えへへ、陽日先生が嬉しいと私も嬉しいな…って今は集中しなきゃ。

教室の入り口で立ち止まる気配。こんなバレバレな罠…っと言って、陽日先生は扉に手をかける。
今だ…!!


「直ちゃん引っかかっ…、」
「あー転んだあああっ!」


私は叫び(棒読み)ながら、糸を持っている粟田くんにつまづいたように見せかけて転ぶ。
そのまま粟田くんと一緒に倒れ込んでしまった。
その瞬間に糸が緩んだようだ。…よし上出来。


「ご、ごめん!勝負の邪魔しちゃって…」
「いーよいーよ。…それより名字、上から退いてくんない?」


うぇ?あ、そうだったごめんごめん。
よいしょっと言いながら粟田くんから退くと、陽日先生と目が合った。
心なしか、怒ってるように見えたけど、HRが始まったので席に戻った。




***




「陽日先生ー」
「ん?どうした?」
「美味しいですか?」
「おう!すごく美味いぞ!」


私があの勝負を邪魔したのは、今日の陽日先生のお弁当を作ったのが私だったから。
私が作ったから駄目!なんて言えないし…。本当に粟田くんたちには悪いことしたなぁ。


「……なぁ、名字」
「はい?」
「朝、転んだのワザとだよな?」


うっ…知ってたんだ…。
素直に頷くと、陽日先生は口と弁当箱を往復していた箸を止めて、眉をひそめた。


「あの、その…すみません。今日のお弁当…食べて欲しかったので…」


ハンバーグとかエビフライとか頑張ったから、取られてしまうのが寂しくて。
どうしようかと考えていた結果がこれだった。


「あ、謝らなくていい!…ただ、あの時さ…粟田に抱きついただろ?それで…」


嫉妬、した。


その言葉を聞いて私の心はきゅん!と音を鳴らした。嬉しすぎて死にそう!
…ということは、さっき怒ってたのは嫉妬してたからなんだ…。
早起きしてお弁当作って良かった。粟田くんたち邪魔して良かった…!


「お前からもらった弁当は必ず守るから。…も、もうするなよ!」
「はいっ。あ…でも、おかずを取られても先生のオカズには私がいま、」
「あーあーあー!女子がそんなこと言うなぁあ!」


誰か聞いてたらどーすんだ!!と、慌てて私の口を塞ぐ陽日先生の顔は真っ赤っか。

大丈夫です。ここに私たちしかいないのは確認済みです。
って言いたいのに言えないんですけど。

仕方なく、私は唇に当たるしっとり汗ばんだ手のひらを、音を立ててちゅうっと吸った。






真っ直ぐな君に
(な、な、な、なななにしてぇぇえ!?)
(苦しかったんで息吸いました)








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