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月曜日





星月学園の美術部は毎年、ちょっと大きめの展覧会に絵や彫刻を出している。
美術部員である私も出展する絵を完成させなければいけないのに、締め切り一週間前になっても描きたいものさえ決まってなかった。

そこで、昼休みに従兄のシローくんの所へ何か良い写真はないかと相談しに行った。


「あ、これなんてどーお?撮れたてホヤホヤよ?」
「えぇ…私には難しいよ…あ、」


机上に広がる写真をかき分けていると、目を引く写真発見。
写真に収まりきらない程の存在感に誘われる。


「それ良いアングルでしょ〜。今年のインハイで大活躍した弓道部のルーキーくんでさ…」
「シローくん…私、これにする!」
「即決め!?ま、いいけど。んー…ならさ、実物描いてみたら?」


ゴーグルの奥で細められた瞳は、面白そうに輝いていた。




***




「お前が名字だな、ぶ…金久保先輩から聞いている。好きなだけ見ていくといい」
「あ、ありがとうございます…!」


部長である宮地くんにお礼を言ってから、弓道場の隅に座ってスケッチブックを開く。
みんなよく弓なんて引けるなぁ…。典型的な文化系生徒の私には羨ましい。
何より、一人一人射形が違うのに、弓道部全体がキラキラ輝いて見えるのが眩しい。

せわしなく首を動かしていたら、あの写真の男の子を見つけた。

弓を引いて、的を狙って、矢を持つ手を離すと…矢は的へ吸い込まれるようにストッと中心に突き刺さる。
思わず感嘆が漏れ、それに気付いた男の子は弓を置いて私の方へやって来た。

……え、あ、嘘。心の準備が…!


「先輩、僕の射形に見とれちゃいました?」


見とれるって…、いや見とれてたけれども。
すごく自分に自信を持ってるんだ、と第一印象。

ここで嘘を吐いても…と思って素直に頷けば、その子は嬉しそうに笑って"木ノ瀬梓"という名前を教えてくれた。


「名字先輩は素直で可愛いですね」
「かわっ…!?」
「そうだ、僕で良ければもっと近くで射形をお見せしますよ?」


ぐっと顔を近付ける木ノ瀬くんに心臓が高鳴る。
ああもしかして、木ノ瀬くんの写真に引かれたのは一目惚れしちゃったんじゃ…。

熱が急激に上昇するのを感じていると、木ノ瀬くんは宮地くんにはしたない!と怒られていた。


グラウンド二十周を言い渡されて外に向かう木ノ瀬くんに、私は思わず


「っ木ノ瀬くん!モ、モデルになってください!!」


と叫んでいた。


ハッと正気に戻った時には月子ちゃんも宮地くんも、みんなポカンとしていた。

シーンと静まり返る場内。
しまった…、恥ずかしい!

でも、木ノ瀬くんはお腹を抱えて笑いながら、「いいですよ」と返してくれたから…結果オーライ、なのかな?





始まりのフォトグラフ
触れた写真は色が溢れる君の姿。
収まりきらない色の欠片は地に、私に、零れ落ちる。

モノクロだった世界が、今、生まれ変わる。








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