瑛で7つのお題【瑛誕企画】
6.花火、みたいに
「ねっ、早く早く!」
「ちょっと待て、今火付けるから」
マッチを擦って、渚が持つ吹き出し花火に火を付ける。シューッと音を立てて、煙と共に赤やピンクの光を放った。
「つかさぁ…来月花火大会あるのに、何でまた花火するんだよ。わざわざ」
「たまにはこういう花火も風流でいいじゃない♪ほらほら、佐伯くんも持って」
そう言って彼女は、吹き出し花火を俺に持たせて火を付ける。
煙が目に染みるけど、花火の光に照らされる渚が妙に綺麗で…思わず見とれた。
「綺麗だね〜」
「あぁ…」
お前が綺麗なんだ。
思わず言いそうになったのを堪えた。幾らなんでもクサ過ぎるよな…。
でも確かに、花火大会とはまた違った赴きがある。
それに…
こっちの方が、よりお前を傍に感じる気がするし。
…妙にドキドキするのは何故だろう?
「あぁ…もう終わっちゃった。あとは線香花火だけだね」
線香花火の赤い小さな玉が、チリチリと音を立てる。
でも、何ていうか…
「線香花火が消えた後って寂しい気持ちになるんだよね」
ぼんやりと、線香花火を見つめながら彼女は呟く。
…そう。俺も今そう思った。
そういえば、子供の時からそう思ってた気がする。
あの時と…
お前と別れたあの時の気持ちと、よく似ていたから。
「あ」
線香花火の炎が地面に落ちた瞬間。
俺は、後ろから渚を抱き締めてた。自然に体が動いてしまった。
抱き締めずにいられなかった。
だって、こうしなければ…
「…これなら、寂しくないね」
渚は、俺の腕をぎゅっと抱き締めて幸せそうに目を閉じる。
…あぁ。
本当にそう思う。
やっぱりお前が傍に居ないと、駄目みたいだ…俺。
来年の夏も、こうやって一緒に花火出来たらいいな。
この先も…ずっと。
…俺の傍に。
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