瑛で7つのお題【瑛誕企画】
4.眼鏡の奥は
「何だよ、人の顔ジロジロ見て」
「ううん、佐伯くんって眼鏡似合うなぁって思って」
「はぁ?」
珊瑚礁の俺の部屋で勉強を教えていたら、突然飛び出した渚の一言。
思わず眼鏡がズレた。
「…似合ってないし。馬鹿な事言ってないで、勉強に集中しろ」
「あいたっ」
制裁のチョップが彼女の頭に命中。
…ったく。コイツはいつも一言余計なんだよな。
「似合って堪るかよ。好きでしてる訳じゃないし。いつもはコンタクトだけど、勉強する時はこっちの方が楽だからしてるだけで…」
「でも、似合ってるよ♪可愛いし」
そう言って何故かニヤニヤする渚。
眼鏡掛けた姿が可愛いなんて言われたって、嬉しくもない。
いや…そもそも可愛いという言葉自体、男に言う台詞じゃないんだろうけど。
「似合ってない。あーっもう!いいから、勉強に集中しろって。またチョップの刑だぞ」
「あーん、佐伯せんせーが虐める〜」
そう言って、渚は大袈裟に頭を押さえる。
…先生。
何となくいい響き…いやいやいや。浸ってる場合じゃないだろ、俺!
「…はぁ。分かったから、さっさとやれ。次の問題は…」
参考書なんて見向きもせず、渚は懲りもせず俺の顔をまじまじと見つめて来る。
「お前いい加減に…」
「やっぱり眼鏡したままだと、キスってしにくいのかな?」
思わずペンを落とした。
キョトンとした顔で、何を言い出すのかと思えば。相変わらず訳が分からない。
「……試してみるか?」
「えっ」
驚いた顔のまま、彼女は固まる。冗談のつもりだったのに、そんな顔されると何も言えない。
「あ…いや、冗談…」
何となく恥ずかしくて目を逸らそうすると、突然頬を引き寄せられた。
ほんの、一瞬。
たった一瞬。
軽く触れただけのキス。
「…邪魔じゃないよ?」
「……お前が言うな」
ふふっと楽しそうに笑う渚に、今度は俺から口付ける。
…確かに、邪魔じゃないけど。
やっぱり次からは、勉強する時もコンタクトにしよう。
色々と、不便だから。
…キスだけじゃ我慢できそうもない。
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